研究課題/領域番号 |
17K00131
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
河野 英太郎 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (40285432)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Bluetooth MANET / Bluetooth / Piconet / 端末密度 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,元々端末密度が極めて疎なネットワーク環境で利用可能な遅延耐性ネットワークの考え方を,近距離無線通信プロトコルとして提案されているBluetoothを用いて,端末密度が密な場合でも発生しうる切断への耐性をもち,既に端末間の接続性が確立している端末群があればモバイルアドホックネットワーク(MANET)で一般に用いられている無線マルチホップ通信を用いて全ての端末に高速にデータを伝搬させるシステムを核として,提案法を設計してきた.その際,本来異なる規格であるClassic BluetoothとBluetooth Low Energyを相補的に用いることにより,より高速かつ端末の切断時からの回復の迅速化を達成している.2020年度は,前年度に小型端末である Raspberry Pi での提案に加え,Android OSを持つスマートフォンでの動作についても実機を用いてその挙動を注意深く調べ,端末密集時に1つの端末に多くの端末からのコネクション確立要求パケットが到来し,Bluetoothの仕様により,端末の処理負荷が急増してしまうことでコネクションが確立できなくなることを突き止めた.また,そのような現象の回避のために,2019年度までは同時にコネクション確立を行ってしまうことに対する競合回避に用いている端末の Public Device Address (PDA)の考え方を,2つの端末間ではなく,通信範囲内にある複数の端末間でのパケット集中回避に用いる手法を提案した.これにより,端末密集時における,過剰なコネクション確立要求パケットによるBluetooth MANETの性能低下を抑えることが可能なことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究題目にある通り,本研究は「端末密集環境で利用可能なBluetoothMANET構成法と高速データ転送手法」であるため,多数の人間が密集する状況を実測することは,新型コロナウィルスとその変異種が猛威を振るっている現在では検証ができない.したがって,実環境での検証が難しく,2020年度は研究室内で Raspberry Pi 端末や Android端末を多数並べ,注意深く挙動を観測しながら研究を行っている.このような研究方針の転換は,一般には一方的に研究の進展には役立たない場合が多い.しかしながら,我々は2020年度の研究環境においても端末密集環境で Bluetooth MANETが陥ってしまう性能低下の原因の究明とその事象への対応という成果を得ている.この進捗報告を記述している時点で,研究環境が一気に好転する兆しは見出せていないが,注意深く研究を進めてゆく必要がある.
2020年度で解明し,対策を行った手法については改良の余地はあると考えているので,今後も積極的に研究を進めてゆく.また,Bluetooth を用いた通信方式について,過去から現在までに至る他の研究者の提案手法と,本研究課題の最終的な提案手法との違いを明らかにし,その特色と効果が分かりやすくなるよう,調査を行う.さらに,ここまでの研究結果について,研究会,あるいは国際会議,更には学術論文の作成を通して国内外に示すことを目指す.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」欄でも記述したが,2020年度で解明し,対策を行った手法については改良の余地はあると考えているので,今後も積極的に研究を進めてゆく.また,Bluetooth を用いた通信方式について,過去から現在までに至る他の研究者の提案手法と,本研究課題の最終的な提案手法との違いを明らかにし,その特色と効果が分かりやすくなるよう,調査を行う.さらに,ここまでの研究結果について,研究会,国際会議,更には学術論文の作成を通して国内外に示すことを目指す.そのためには,本研究課題で作成しているシミュレータについて,概念的な検証に加え,実際の端末における挙動をできるだけ反映するための改良が必要である. 必要に応じて,研究室で所有している端末数を増やし,それらの端末の挙動を検証するための実験室の用意をするなど,様々な検討を行っている.
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」欄にも記したように,新型コロナウイルスの問題により,本研究の「端末密集環境」を再現するための実験計画や,実験室での多数の端末を用いた実験計画が遂行できない環境になってしまい,研究計画そのものを見直す必要が生じている.そのため,2020年度は微視的な観点かつBluetoothの原理や仕様を見直すことに集中したため,多くの機器の購入などができなかったため.次年度は研究計画を見直し,必要に応じて端末とその実測環境を用意するなどに研究費を使用することを考える.
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