研究課題/領域番号 |
17K00133
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
吉野 秀明 日本工業大学, 工学部, 教授 (00644816)
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研究分担者 |
平栗 健史 日本工業大学, 工学部, 教授 (90582817)
大田 健紘 日本工業大学, 工学部, 助教 (50511911)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネットワーク / センサ / トラヒック / データ集約 / 異常検知 / IoT |
研究実績の概要 |
本年度は,以下のとおりセンサデータ集約環境の理論解析およびシミュレーション評価,データ圧縮技術であるスケッチ法の比較評価までを実施した: 1.基本的センサデータ集約方式の理論解析: IoTゲートウェイ等における基本的なデータ集約方式の系内時間特性を明らかにし,最適集約パラメータを導出した.具体的には,一定間隔集約方式と一定個数集約方式を待ち行列としてモデル化し,総系内時間分布のLSTを導出した.さらに,両モデルの平均総系内時間を最小化する最適集約間隔および最適集約個数の精度の良い近似式を導出した.これらの結果を電子情報通信学会研究会で発表すると共に,同英文論文誌に投稿し採録を果たした. 2.データ集約環境のシミュレーション評価: 上記理論解析結果を組み合せた適応的な最適集約制御方式を提案し,データ集約環境を模擬するシミュレーションにより,時変動入力トラヒックに対する過渡特性を評価し,電子情報通信学会総合大会で発表した. 3.異常トラヒック検知性能の評価: 通信トラヒック量の増大に対応可能な異常トラヒック検知技術を確立するためには,実データの予測から異常検知までの処理時間特性を明確にすることが重要となる.本年度は,予測処理及び可視化処理に要する処理時間特性を,性能の異なる3種のPC環境を用いて比較評価した. 上記に加え,IEEE ComSocの主要国際会議であるCQR workshop,ICCおよびGlobecomに参加し,QoE評価,トラヒック分析・可視化,トラヒック制御技術などの関連技術を調査した.さらに,災害時の輻輳制御方式のシミュレーション評価等の検討を進め,主として電子情報通信学会にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したとおり,データ集約環境の構築とスケーラビリティ評価ならびに異常トラヒック検知技術の処理能力評価まで,おおむね当初計画どおり進捗している. 当初計画どおりに進まなかった事項は,次の点である.当初,地理的に分散する一次集約データをオンラインで収集し,時系列データ分析を実行する第二次階層サーバの処理能力評価,及び一次集約,二次集約間規模のスケーラビリティバランスの総合評価までを目指していた.しかしながら,到達点は,一次集約環境の性能評価に留まっており,二次集約まで含めた階層的集約環境での評価は実現できていない. この理由としては,年度途中で,当初シミュレーションのみで評価する予定であった一次集約サーバの特性が理論解析により導出できることを思いつき,当初予定になかった理論解析と論文化に注力したためである.同理論解析結果に基づく,最適集約制御方式の提案と評価も当初計画に無かった事項として進展しており,本質的な原理に根差した成果に繋がっていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成29度の第1段階のデータ集約環境の特性評価による洞察に基づき,今後は,第2段階として,機械学習を応用した時系列データ分析法の提案と特性評価を進める. 交付申請書の平成30年度の研究実施計画にも記したとおり,SVM(サポートベクタマシン),ニューラルネット,自己組織化マップなど,様々な機械学習技術の異常検知への適用が試みられているが,これら単体での検出精度には限界がある.本研究では,複数の機械学習技術を組み合わせることで検知精度を向上させる時系列データ分析法の確立を目指す. このため,当初計画では,各種機械学習技術がモジュールとして用意されている汎用データマイニングツールVisual Mining Studioを活用し特性評価を進める,としていたが,機械学習の各種ツール類のオープンソース化が進展していることから,複数のオープンソースツールを活用したハイブリッド型時系列データ分析法の適用可能性についても検討する. 併せて,平成29年度の理論解析をより一般的なモデルに拡張した近似解析,及び,理論解析を応用した適応的制御技術の検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りの進捗を確保した上で,当初予定していた無停電電源装置やLANケーブル等の物品購入を見直し,約4万円の物品費を削減したことが,次年度使用額が生じた主な理由である. 研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが,研究費も含め,当初計画通りの計画を進めていく.
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