研究課題/領域番号 |
17K00135
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
内田 真人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20419617)
|
研究分担者 |
鶴 正人 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (40231443)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ネットワークトモグラフィ |
研究実績の概要 |
トラヒック行列推定においては,対地間フロー流量を直接観測できないという制約により,その推定精度も直接評価できないという本質的な問題がある.すなわち,トラヒック行列推定の精度を非観測空間(対地間フロー流量が物理的に取り得る状態の集合)上において直接評価することは原理的に不可能であるという問題がある. この問題を解決するために,平成29年度の研究では,トラヒック行列推定の精度を,非観測空間上ではなく,観測空間(集約フロー流量が物理的に取り得る状態の集合)上において間接評価する手法について検討した.この手法では,トラヒック行列推定の手法の一つとして知られる逆関数法により推定された対地間フロー流量分布から集約フロー流量分布を再構成する.また,その再構成された集約フロー流量分布と,実際に観測された経験集約フロー流量分布との整合性を評価する.一方,平成30年度以降に予定していた計画を前倒しし,集約フロー流量の観測データに対してリサンプリングを繰り返すことで多数の複製データを作成し,これらの複製データに対して上記の手法を適用する手法について検討した.実ネットワークで計測されたトラヒックデータを用いた検証実験の結果,これらの一連の手法の有効性が確認された. さらに,当初の計画に含まれていなかった以下の検討も実施した.逆関数法を実行する上では,各ルータにおいて観測される対地間フロー流量の最小値が同時にゼロであるという仮定が必要となる.しかし,この仮定は現実のネットワーク環境においては必ずしも成立しない.そこで平成29年度の研究では,従来の逆関数法における上記のような仮定が成立しない場合にも適用可能となる一般化された手法を提案し,その有効性を数値実験により検証した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度の研究では,当初の計画通り,トラヒック行列推定の精度を,非観測空間上ではなく,観測空間上において間接評価する手法について検討した.また,平成30年度以降に予定していた計画を前倒しし,集約フロー流量の観測データに対してリサンプリングを繰り返すことで多数の複製データを作成し,これらの複製データに対して上記の手法を適用する手法について検討した.さらに,当初の計画に含まれていなかった課題として,従来の逆関数法を実行する上で必要である仮定「各ルータにおいて観測される対地間フロー流量の最小値がゼロである」が成立しない場合にも適用することのできる一般化された逆関数法について検討した.以上のことから,当初の計画以上に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究成果を踏まえ,トラヒック行列推定の更なる精度向上を目指す.例えば,データに含まれるノイズ成分に対してロバストな手法や,観測空間上の拘束条件を考慮することのできる手法の有効性について検討する.また,得られた成果については,順次,対外発表を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
発生した次年度使用額は少額であり,端数額であるとみなせる.翌年度分として配分された助成金と合算し,翌年度中に実施する研究費に充てる.
|