トラヒック行列推定においては、対地間フロー流量を直接観測できないという制約により、その推定精度を直接評価できないという本質的な問題がある。すなわち、トラヒック行列推定の精度を非観測空間(対地間フロー流量が物理的に取り得る状態の集合)上において直接評価することは原理的に不可能であるという問題がある。この課題を解決するために、平成29~30年度の研究では、トラヒック行列推定の精度を、非観測空間上ではなく、観測空間(集約フロー流量が物理的に取り得る状態の集合)上において間接評価する手法について検討した。具体的には、トラヒック行列推定の手法の一つとして知られる逆関数法により推定された対地間フロー流量分布から集約フロー流量分布を再構成すると共に、その再構成された集約フロー流量分布と、実際に観測された経験集約フロー流量分布との整合性を評価する手法について検討した。 また、トラヒック行列推定には、解の不定性により推定精度が低下するという問題がある。この課題を解決するために、平成31年度の研究では、平成30年度までとは異なる観点からトラヒック行列推定をとらえた。すなわち、実トポロジー上に定義されたトラヒック行列推定が、それと等価な疑似トポロジー上に定義されたトラヒック行列推定に変換できることに着目した。その上で、実トポロジーと疑似トポロジーのそれぞれに対して逆関数法を適用して得られる複数の推定結果を統合することにより、解の不定性を緩和し対地間フロー流量分布の推定精度の向上を図る手法について検討した。 その他、関連する研究として、悪性ドメイン名検知や、光信号品質の瞬間降下イベントに基づいたネットワーク停止予測に関する研究を行った。
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