研究実績の概要 |
様々な端末が多数接続する無線ネットワークにおいては,自律分散型の通信プロトコルの開発が重要である.自律分散型ネットワークの性能を高めていくためには,個々の無線機が自律的に最適な動作を決定できるようにする必要がある.本研究では,各無線機が機械学習によって最適な動作を自律的に学習する方式を提案してきた.コンピュータシミュレーションだけでなく,実機実装による評価を行うことによって,提案手法の実現性と有効性を示してきた. 前年度までに,軽量な強化学習アルゴリズムであるTog-of-War(ToW)ダイナミクスによって,自律分散的に無線ネットワークの状態を最適化できることを示した.小型無線センサ等のIoT機器には,限られた処理能力,電力で長期間動作することが要求される.本研究では,ToWに基づく軽量なアルゴリズムをWi-SUN無線デバイスを具備したIoT機器に実装し,実機による評価実験によって,最適なチャネル選択が可能となることを確認してきた.デバイス数が多くなるMassive IoT環境においては,提案手法によって負荷分散も可能となることを示してきた.このような研究結果を,論文として執筆投稿し,採録されている(J. Ma, S. Hasegawa, S.-Ju Kim and M. Hasegawa, Appl. Sci. 9(18), 3730, 2019.) .この論文の発表後,本研究内容が国内外の多くのニュースサイト等で取り上げられた(日経産業新聞2019/11/27、QS WOWNEWS 2019/11/11、Science Daily 2019/11/7、Tech Explorist 2019/11/14、Technology Networks 2019/11/8、IoTToday 2019/11/14、@IT 2019/11/13など).また,強化学習アルゴリズムを用いた提案方式を,無線ネットワーク選択における意思決定問題にも応用し,実験によって有効性を実証した.集中制御を必要としない自律分散型強化学習によって,無線ネットワークの性能向上が可能であることを,シミュレーションだけでなく,実験によって実証することに成功した.
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