研究課題/領域番号 |
17K00138
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
藤田 悟 法政大学, 情報科学部, 教授 (40513776)
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研究分担者 |
内田 薫 法政大学, 情報科学研究科, 教授 (40735651)
廣津 登志夫 法政大学, 情報科学部, 教授 (10378268)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 画像特徴量抽出 / 位置推定 / 特徴量マッチング / 歪み補正 / ホモグラフィ行列 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究を通して課題になっていた撮影端末の傾斜角度の問題に対して、妥当な解決手法を導き出し、「マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウム」にて発表し、優秀プレゼンテーション賞を受賞した。この手法では、まず、AR Core を利用して、床表面の位置と法線ベクトルに加え、カメラの姿勢行列を取得する。そして、これらの値から、透視画像的にひずんだ床画像を、真上から見下ろした床画像に変換するためのホモグラフィ行列を計算し、適格に画像変換することが可能である。画像の解像度が高い部分を選択することで、画質の劣化の少ない画像変換を実現することで、床指紋の照合率も劣化することなく、99.2%の照合に成功した。 研究開発を始めた段階では、床指紋認証は、サーバ計算機上で GPU を用いて実行することを前提としていたが、研究会の意見交換の中から、スマートフォン端末単独で床指紋照合する技術への要求があり、これに取り組んだ。スマートフォンのネイティブアプリケーションとして、高速化を意識した実装を行うことで、4秒程度で床指紋照合できることが確認できるまでに至った。ただし、速度面では十分とは言えず、さらなる高速化を検討中である。 一方、床指紋照合技術を、床指紋以外の分野に応用する研究も開始した。床指紋技術のコアは、物体が持つ固有のパターンを画像から特徴量として抽出し、個体認識できることである。これを、ノートパソコンの表面や、ACアダプタなどに応用することで、モノの所有者認識に利用できることを示した。この結果については、電子情報通信学会の総合大会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
床指紋の照合技術については、事前の画像フィルタ、空間的にバランスされた特徴点抽出技術、特徴点マッチング、マッチングの妥当性評価技術が確立できたと考えている。しかし、これらは、すべて、サーバ上で GPU を利用した実装であったため、利用局面等を考えると、スマートフォン内に閉じた実装が必要であるとの指摘を、研究会での討論の中で受けた。そこで、新たにスマートフォン内で実行する床指紋照合技術について調査研究を行い、4秒程度の時間はかかるものの、その可能性を実証するに至った。 しかし、スマートフォン内での実装には、いくつかの課題が残されている。ひとつは、カメラのプレビュー画像から連続的に撮影された動画を用いて床指紋を行うため、解像度、あるいは、手振れの問題で照合率が下がる問題である。一方、連続画像から照合が行えれば、連続的な位置推定を行うことができ、応用局面が広がるはずであり、この両面性を持った課題に解決手法を見出すことが必要なのが現状である。 高精度かつ、高速な床指紋技術を完成し、社会に対し有用な技術を提供できるように、最終年の研究を進める所存である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、撮影端末の傾斜角度について、その補正手法が確立された点が大きな成果である。AR Core の利用、あるいは、重力加速度の利用のいずれにしても、高精度で直上からの床画像に変換できる数式を導けたことが大きい。 最終年度に残された課題は、スマートフォン端末の中に閉じて、どこまで実時間で指紋照合ができるか、という実装上の問題と、床面の画像照合という一つの画像での照合ではなく、連続的な位置推定の問題が残されていると考えている。いずれも、スマートフォン端末の中での高速処理が要求される問題であり、実装とアルゴリズムの改善の両面で、その実現技術の研究を進めたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度には、国際会議への発表、最終的な実装機器の購入などが必要になると考え、一部基金を繰り越すことになった。今後の研究方針に従って、必要な経費分を最終年度に利用したいと考えている。
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