研究課題/領域番号 |
17K00141
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
藤原 明広 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70448687)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒューマンモビリティ / 移動モデル / データ科学 |
研究実績の概要 |
人の移動モデルでは,長距離移動パターンに社会ネットワークの影響が現れやすい特性がある.このことから,社会ネットワークと人の移動の関係を追究したモデルを検討していく必要がある.平成29年度は,人の移動が社会ネットワークの構造に与える影響を調査する為,ホームシック・レヴィ歩行モデルをベースにして移動するエージェントが近接遭遇すると,一定確率で友人になるというルールに従って社会ネットワークを生成するモデルについて調査した.その結果,ホームシック・レヴィ歩行による単純な移動と近接遭遇では,社会ネットワークに現れる次数分布のスケールフリー性やスモールワールド性が現れにくいことが明らかになった.また,友人になる確率に何らかの格差を生み出すメカニズムを入れることでスケールフリー性が回復することも分かった. 一方,人の移動の標準モデルを構築する為には,様々な方法で人の移動に関するデータを収集する必要がある.例えば,街中を走る自動車の移動や渋滞のデータをクラウドソーシングで収集する方法が提案されている.典型的な方法としては移動する自動車のGPSセンサやユーザが状況を手動入力する方法が知られている.一方,道路の路側にビーコンを置くことで道路をスマートにする試みも検討されている.これに高信頼な情報を不特定多数のビーコンを利用して自律的に構築するブロックチェーン技術を合わせることで,既存の提案手法とは異なる新しいクラウドソーシングの可能性についても検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)からGPSデータの提供を受けて,都市における人の移動や近接遭遇パターンについてデータ分析を進めている.平成30年度に検討する予定であった移動モデルの研究にも着手することができた.また,データ分析や移動モデルの検討に加えて,ブロックチェーン技術を用いた分散型交通情報システムの提案も行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続きGPSデータを用いたデータ分析を進めていく.特に平常時と災害時の人の移動パターンの変化や共通点を標準移動モデルにつなげる研究を行っていきたい. 平成29年度は人の移動が社会ネットワークに与える影響について研究した.今度は,逆に社会ネットワークが人の移動に与える影響の分析やモデル化を進めていきたい.人の移動と社会ネットワークの生成の間のフィードバック・メカニズムを数理モデルの理論解析やシミュレーションを通じて明らかにしていきたい. また,移動モデルの汎用化とモデル選択についても検討したい.まず人の移動データを移動モデルに同化する手法を研究していく.その為に既存提案の移動モデルを含む広い枠組みとしての標準移動モデルの表現について調査する.またモデルを同化する為の基準となる視点についても考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
残額でワークステーション用の増設メモリや記録用メディアの購入を検討したが,残額では金額が不足していた.従って,次年度交付予定の予算と合算することで,メモリやメディアを購入しようと考えたため.
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