研究課題/領域番号 |
17K00161
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
今村 誠 東海大学, 情報通信学部, 教授 (30780291)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ビックデータの分析・活用 / 機械学習 / IoT / 信頼性工学 / 異常検知 / 故障診断 / 寿命予測 |
研究実績の概要 |
計画研究調書の年度計画で提案した3年計画の研究における初年度に予定していた研究を完了し,国際会議3件に発表した。また,ジャーナル2件に投稿中である。 (1) 時系列における凸形状の振幅を高速に抽出するレグ振幅解析: INFSOCの10th International Workshop on Informaticsに採録。また,証明と評価結果を加えた論文をInternational Journal of Informatics Society (IJIS)に投稿した(採録通知あり) (2) 時系列の定型パターンの変化傾向を抽出する時系列チェイン: データマイニングのトップカンファレンスであるIEEE International Conference on Data Mining (ICDM 2017)に採録されるとともに,Best Student Paper Awardを受賞した。より内容を充実した版をSpringerの論文誌Knowledge and Information Systemsに投稿中(条件付き採録で再投稿中) (3) 機器の保全サービスにおけるビジネスプロセスを改善するための要求分析: 研究成果の産業界への技術移転を目的として,実用化のための要求を分析し,The Asia Pacific Conference of the Prognostics and health Management Society (PHMAP) 2017にて発表した。また, PHMAPでは,日本の代表としてCo-chairを担当した。 また,研究関連成果を産業界に広めると共に,研究に協力いただける企業を募るために,半導体業界の国際会議AEC/APC symposium Asia 2017と鉄鋼業界の第158回制御技術部会大会で,機器・設備の予知保全に関するチュートリアル講演を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画研究調書の年度計画(3年計画)に記載した初年度の計画内容の主要部分を完了したので,おおむね順調に進展しているといえる。具体的には,平成30・31年度に予定している技術開発に必要なコア技術である特徴抽出アルゴリズムの試作・評価を完了すると共に,評価用データを収集するための実験環境の構築を完了した。この点に関しては,予定より進んでいる。しかし,適用対象である設備の現場の技術者のヒアリングが重要でないことに起因して,「技術者がもつ因果知識」との付き合わせによる実用上の課題の抽出はやや遅れている。対策として,産業界への技術移転に向け,協力企業と連携した実用性評価の体制の構築を進めている。 (1) 平成30・31年度の研究に必要なコアとなる特徴抽出アルゴリズムの試作・評価: 計画研究調書の研究目的にて,本研究の独創的なコア技術とした自然言語で表現される定性的な状態変化を抽出するために,以下の二つのアルゴリズムを試作・評価し,国際会議と論文誌に投稿した。 ・時系列における凸形状の振幅を高速に抽出するレグ振幅解析 ・定型パターンが少しずつ変化して最終的に大きな変化にいたる劣化傾向を発見する時系列チェイン抽出 (2) 評価用データを収集するための実験環境の構築: 工場の機器にセンサーを付与してデータを収集・分析する実験設備として,計画研究調書で申請した通り「設備診断・分析支援システムSA1-FAP」を購入し,振動データの取集が可能であることを確認すると共に,また,内蔵のプログラマブルロジックコントローラの基礎的な操作を学習した。 (3) 協力企業と連携した実用性評価の体制の構築: (1)で試作した技術を協力企業に説明し,実用化に向けた評価計画の実験を次年度進めることで合意した。
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今後の研究の推進方策 |
計画研究調書の年度計画(3年計画)と29年度の研究成果により得た知見に基づいて,平成30・31年度の研究を進めていく。初年度に基本的なアイデアを確立したが,2年目以降は,適用対象のドメインに関する因果知識がより重要になるため,協力企業とのより一層の連携体制の確立にも注力していく。以下,具体的な研究課題について述べる。 (1) 運転パターンを抽出するセグメンテーション技術(30 年度上期): 29年度の研究により,起動,停止,定常,出力変更,レシピー変更など,時系列の文脈情報にあたる運転パターンを抽出できないと,適切な因果関係を抽出できないことがわかった。対策として,運転パターンを抽出するセグメンテーション技術を開発していく。 (2) 多変数の統計的な因果関係抽出(30 年度下期~31年度上期): 疎構造学習,Glanger因果などの既存技術を追試・評価すると共に,29年度に試作したオリジナルな特徴抽出技術(レグ振幅解析,時系列チェイン抽出)を適用することにより,新たな統計的な因果関係抽出手法を確立する。30 年度下期は,因果知識を用いたデータ特徴の抽出方式を研究し,31年度上期は,データからの因果関係の発見方式を研究する。 (3) ドメインに関する因果知識との照合による評価(31年度下期): (1)(2)で得た技術を実装し,実データから抽出した因果知識が,適用対象のドメインの技術者からにて有用であるかを評価する。また,この評価結果に基づきアルゴリズムを改良すると共に,産業界への技術移転に向けた開発計画を立案していく。
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