研究課題/領域番号 |
17K00164
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長谷川 秀彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (20164824)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 対称化 / 高精度演算 / 共役勾配法 / 疎行列 / 連立一次方程式 / 反復法 / クリロフ部分空間法 |
研究実績の概要 |
計画では、倍精度と4倍精度で以下の3系統のアルゴリズムを実装し、Florida 大学の Matrix Collection などを用いて網羅的な収束性データを収集することになっていた。結果として、非対称行列系の解法(BiCG法)をそのまま用いる方法、係数行列を対称化して共役勾配法を適用するCGNE 法などを用いる方法の2系統はほぼ実験済みである。AT y = b’と Ax = b を連立させて解く方法とAVX512の基本性能・特徴のテストは未着手である。全体的にみると、計画の半分程度の実行状況である。 現時点でも、解析用にかなり大量のデータが収集できている。詳細な解析は未着手だが、すべての収集済みデータを並べて見ると、最初の予想とは異なり、非対称行列系の解法(BiCG法)が非常によい収束性を示している。この現象が一般的かどうかを判断するため、方程式の右辺依存性(係数行列だけでは問題の難易度は決定できない)を付加的に確認する必要が生じている。より高精度な演算を用いた収束性のテストも同時に行ったため、データは収束の精度依存性がより広い範囲でみられるようになっている。 事前の予想とは異なり、対称化して共役勾配法を適用する方法ではよい収束性が得られなかったため、対称行列の性質の評価、ならびに正定値性を強くするような対称化法の検討を試みる予定である。また、収束性のパターンによる場合分けのため、対象とする問題のグループ分けが新たな課題として必要になってきた。 マシン依存の高速化は未着手である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1) 2018年3月までは管理職(情報学群長)として、組織の運営に多くの時間を費やす必要があった。 2) 多くのテスト問題に対して、非対称行列系の解法(BiCG法)をそのまま用いる方法と係数行列を対称化して共役勾配法を適用する方法で、倍精度演算と高精度演算で収束性データを収集した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)今年度は、より多くの時間を本課題に費やす。 2)連立させて解く方法に対して、倍精度演算と高精度演算で収束性のデータを収集する。 3)方程式の右辺と対称行列の性質を変化させたデータを収集する(値は連続に変化させられるため、テスト条件の取捨選択とデータの増大に対する対策を考える必要がある)。 4)共役勾配法を適用する方法の対称化法を変えて非対称系の反復解法を用いたものと比較する。 5)すべての問題に対してベストである反復解法は存在しえないので、対象とする問題のグループ分けを考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Xeon Phi サーバを購入する計画で予算申請を行ったが、交付額が減らされたこととサーバの価格が予定よりも高価になったため、他大学が所有するサーバを利用させてもらうように計画を変更した。このことにより、年度ごとの予算執行計画が変わり、初年度の使用額が少なくなった。 申請時の予想とは異なり、対称化と高精度化だけでは問題の解消が見込めない状況なので、この分野に精通した研究分担者を追加する。また、マシン依存の高速化には明文化されていないノウハウが必要なので、実際にAVX512を利用している研究分担者を追加する。 その結果、より広い分野での発表・情報収集のための出張が増えることなどにより、今後、より多くの支出が見込まれる予定である。
|