研究課題/領域番号 |
17K00164
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長谷川 秀彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (20164824)
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研究分担者 |
田中 輝雄 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 教授 (90622837)
石渡 恵美子 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (30287958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 対称化 / 共役勾配法 / 高精度演算 / 疎行列 / 連立一次方程式 |
研究実績の概要 |
計画では、the SuiteSparse Matrix Collection を用いて、倍精度と4倍精度で、非対称行列系の解法(BiCG法)をそのまま用いる方法、係数行列を対称化して共役勾配法を適用する方法 (CGNE法など、条件数が増大)、A^T y = b’と Ax = b を連立させて解く方法(次元が増大)などを実装し、網羅的な収束性データを収集することになっていた。AVX2 を活用した4倍精度演算の高速化はほぼ完了し、手元のラップトップコンピュータであっても高速性が享受できるようになった。より大きな並列性が達成できる AVX512 は、ハードウェアとしての構成が変更されたため、効果的な高速化手法と利用方法を検討中である。 CGNE法を用いる方法では、単純な対称化 A^T A では収束が非常に悪く、「修正」が必要だが、共役勾配法にとって好都合な対称化法はまだ見いだせていない。 全体的にみると、計画の半分程度の実行状況である。 現時点までに採取できたデータの範囲では、最初の予想とは異なり、倍精度演算であっても、非対称行列系の解法 BiCG法 が非常によい収束性を示し、共役勾配法のよい部分はまったくひきだせていない。方程式の右辺依存性についての検討も進行中である。 計画にはなかったが、8倍精度相当の高精度演算を用いた収束性データを採取したこと、機械学習を用いて行列のグレイスケース画像から反復解法の収束性を予測したこと、共役勾配法の高速化のために HPCG (High Performance Conjugate Gradient) の使用を検討したこと、低精度(単精度、半精度)と高精度(4倍精度)を組み合わせるといった方法を検討したことなどは、本年度の実績と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1) 2018年 3月までは管理職(情報学群長)として、組織の運営に多くの時間を費やす必要があり、そのときの遅れが依然として挽回できていない。 2) 多くのテスト問題に対して、非対称系の解法(BiCG法)をそのまま用いる方法と係数行列を対称化して共役勾配法を適用する方法に対して倍精度演算と高精度演算によるデータ収集が必要など、組み合わせでテストケースが増大している。 3) 2019年度には visiting scholar として Innovative Computing Laboratory, University of Tennessee, Knoxville に滞在した。その際、個人でできる研究よりも、そこでしかできない研究に対して集中したため、個人でできる研究は帰国後の先送りとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
1) より多くの時間を本課題に費やすべく努力する。 2) 手元のラップトップ環境を活用して、共役勾配法のための対称化法を試行錯誤する。 3) 方程式の右辺と行列の性質を変化させたデータを採取しながら、テスト条件の取捨選択とデータの増大に対する対策を検討し、大規模データが必要な場面を最小化する。 4) 機械学習を利用して、行列のグレイスケール画像から反復解法を適用した際の収束性の予測がうまくいったので、この結果を「問題に対する切り分け」に組み込み、本研究の手法が必要となる問題数の削減をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年の報告で記載したように、サーバ購入を断念し、大規模計算にはクラウドサービスの利用に計画を変更したため、予算の執行計画が変わった。現時点では、必要になった時点ですみやかに大規模計算が実行できるよう、クラウドサービスのアカウントを保持し、予算も残すように心がけている。 繰り越しを含めた2020年度の予算額は、大規模計算のための計算料金と国際会議での発表で使い切れる程度の額である。
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