研究実績の概要 |
本研究の目的は、スパコン上で計算される大規模データを手元の可視化用端末に移動させることなく、Webブラウザを通して手軽に探索的な可視化が行えるデー タ分析環境を構築することである。本研究課題の最終年度となる2019年度は、前年度までに開発した大規模粒子ベースレンダリング技術を集約し、対話的な可視化処理手順(可視化パイプライン)編集が可能なデータ探索環境を構築した。具体的な成果を以下にあげる。 (1) 可視化パイプラインの半自動編集機能:データ分析時に、利用者にとって大きな手間となる可視化処理手順を記述する可視化パイプラインの構築を自動化するために、深層学習技術を用いたパイプライン推定技術を開発した。本技術では、可視化パイプラインが既知の画像を畳み込むニューラルネットワークを用いた転移学習による再訓練モデルを作成し、それを用いて可視化パイプライン推定を行う。実験では、約1,600枚の可視化画像を使って学習を行い、別に用意した80枚の可視化画像に対して本手法を適用した結果、可視化手法ごとに若干の精度にばらつきがあるがどの手法も80%以上の正答率を得ることができた。また、本技術をWeb上で可視化パイプラインの対話操作が可能な可視化基盤HIVEに適用することで提案技術の有効性を確認した。 (2) 適用検証:前年度までに開発した大規模粒子レンダリング技術を実際の数値シミュレーション結果に適用することで有効性の検証を行った。実験では、燃焼計算シミュレーションだけでなく、より大規模な歯茎摩擦音発生シミュレーションにも適用し、従来環境での可視化コストを大幅に減らすことができ、より効率よくデータ分析操作に注力できることが確認できた。本成果の一部は、スパコン上で数値計算と同時に可視化計算まで行うIn-situ可視化に対して新たな課題を示唆する結果を得ることができ、新たな研究課題につながった。
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