暗号技術は現代においてネットワーク上の通信データを秘匿するために広く利用されているが,それ以外に,電子化されて様々なクラウド環境に保存されたデータの暗号化にも広く利用されている。データの暗号化は安全性の向上に大きく寄与するがそれと同時に,データの利便性にも影響をもたらす。つまり暗号化したデータは復号しなければ利用することができないが,攻撃者によるネットワークを介したコンピュータシステムへの侵入を完全に防止するのが困難な状況においては可能な限り暗号データを復号せずに利用したいという要請がある。本研究プロジェクトではそのような状況へ対応すべく,可能な限り暗号データを秘匿したまま様々な演算処理が可能な暗号技術の実現に取り組んだ。今回得られた主な成果は以下の内容となっている。 データを秘密にしたまま演算処理する秘密計算において,事前に行う処理を幾分多めに実行しておくことで,実際に計算に必要なデータがそろった際の処理を効率化させる手法を,ビット列から元の値を復元する処理に適用する研究に取り組んだ。また秘密のデータが単なる整数ではなく浮動小数点を持つデータも考慮した計算手法の開発に取り組んだ。またこのようなシステムの中で用いる暗号の鍵が漏洩しても過去に暗号化されたデータが復号可能とならないような公開鍵暗号方式の構成に取り組んだ。その中では復号処理とブロックチェーンの利用を組み合わせることで一度だけ復号可能な暗号文の生成を行うことで方式を実現させた。
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