2020年に入り我が国においてもUBERのようなサービスは急速に普及し、また自動運転が可能な自動車の参入や車内へのインターネット接続による情報提供等、新たなサービス展開が目覚ましいものとなった。しかしながら自動運転自動車による事故が発生するなどまだまだ安全性が確立できたというまでには解決すべき課題は多数残されている。こうした背景の下、自動車の管理状況やメンテナンス状態をディーラー等が把握できるように車載されたCPUににバス接続されるOBD2と呼ばれる特別なメンテナンスポートが提供されており、一般向けにもOBD2に接続可能な多くのデバイスが登場している。あいにく、自動車ベンダーは一般向けに開放しているわけではないため、そのメンテナンスポートを利用した不正な制御を行うための攻撃事例も報告されている。 本研究課題では、ITS(Intelligent Transportation System)に着目し、車載計算機と情報端末との通信の安全性を確立するためのセキュリティ技術を生み出すことが最終目標である。具体的には、自動車のような安全性が最優先されるような厳しい動作環境等の制約条件の中で、高速に認証処理(暗号計算)を実現するための手法を検討することにある。その手段として楕円曲線上の定義体から構成されるペアリング演算に着目し、計算処理負荷が大きくなるモジュール群を車載向けに軽量化した専用のアルゴリズムを確立し、その有効性を評価する。最終年度まで取り組んできた実装および実証実験の結果、車載計算機と情報端末とのやり取りで扱われるデータに対するいくつかの攻撃を仮定し、それを防御しつつ安定かつ高速に認証できるのかという観点にて評価を実施した研究成果を取りまとめ、国際会議に論文投稿した。
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