研究実績の概要 |
本研究に先行する研究課題(挑戦的萌芽「音楽の進化心理学:事象関連電位研究」)から続く技術改善の積み重ねにより、昨年度には、サル類の頭皮上から無侵襲で脳波を記録するための方法に進展があり、これまでの数分の一の時間で電極の設置が可能となると同時に、(これまでは困難であった)数時間に渡る安定した脳波記録も可能となった。 この新しい方法により、実験の効率が格段に向上したのを受けて、聴覚の時間窓の進化を調べるための実験をアカゲザルで実施し、成果を英文原著論文として発表した(Itoh et al., Frontiers in Neuroscience, 2019)。また、安定した脳波記録がとくに困難だったマーモセットにおいても、聴覚誘発電位(AEP: auditory evoked potential)の皮質成分(CAEP: cortical auditory evoked potential)および、中潜時成分(MLR: middle latency response)の記録に成功し、その成分の詳細な解析を行ない、その成果を英文原著論文として投稿中である(Itoh et al., submitted)。 そして、これらの研究を総合したところ、ヒト、アカゲザル、マーモセットにおける大脳聴覚処理につき、AEP成分の潜時に種差があることが示された。この結果は、ヒトの聴覚処理の時間窓が延長したという、本研究の作業仮説を支持する結果である。
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