顔の認知研究には、過去に、未知顔を対象とした研究と既知顔を対象とした研究があるが、未知顔から既知顔になっていく過程に関する研究がない。本研究では、顔の想起しやすさという切り口でこれらを統合することを目指す。未知顔を何回も見ることで既知顔へ変わる際の脳活動が、空間的なパターン変化、総量変化のいずれに表象されるのかをみていく。 昨年度までに、よく学習させた未知顔(すなわち既知顔)および有名人顔を知覚、想起したときの脳活動をfMRI実験により取得し、脳活動パターンから誰の顔を想起したか機械学習で推定したが、集団レベルにおいては有意な正答率は得られなかった。一方で行動データでは、誰の顔を想起しているかを反応時間の差として得られ、MRIデータと行動データの間に乖離が生じた。 今年度、昨年度までに得られたMRIデータを詳細に検討した結果、頭部動きによるノイズが取りきれていないことを見出した。MRIデータと行動データとの乖離は、このノイズに原因があると考え、独立成分分析を利用したノイズ除去を実施している。 これら研究の進み具合は、当初申請の通りであり、順調である。今後、MRIデータのノイズ除去を進め、機械学習を用いて解析する。これまでに得られたデータ は「未知顔」、「未知顔を学習した既知顔」、「過学習した有名人顔」を知覚・想起したときの脳活動である。これらのデータについて、集団レベルでの相同性・相違性をまとめ、研究結果の公表を行う。
|