研究課題/領域番号 |
17K00208
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研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
中原 史生 常磐大学, 総合政策学部, 教授 (10326811)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイルカ科 / 鯨類 / 音声コミュニケーション / 社会的知性 / 比較認知科学 |
研究実績の概要 |
本研究は、マイルカ科の鯨類を対象に、向社会行動および欺き行動時における音声コミュニケーションの種差を観察と実験から明らかにし、鯨類の社会的知性の進化的基盤を探ることを目的としている。令和元年度は、野外における観察と飼育下における観察、実験を行っている。 野外では、北海道沿岸においてシャチを対象とした調査を行った。他鯨種を対象として3月に予定していた調査は新型コロナウイルスの影響で延期となっている。調査で得られたデータを解析し、向社会行動の起こる文脈、個体間関係、鳴音などの付随する特徴的な行動について解析を行った。シャチでは集団狩猟、食物分配、救助行動が確認されたが、それらの文脈で発せられる鳴音との間に明確な関係は見受けられなかった。日本動物行動学会においては、向社会的な遊び行動など、鳴き交わしの起こる文脈について報告を行った。 飼育下では、九十九島水族館および新潟市水族館において、行動観察、ビデオ撮影と鳴音の収録(水中および空中)を行った。対象とした鯨種はハンドウイルカとカマイルカであった。向社会的文脈での発音とそれ以外の社会行動時の発音を解析し、種間で比較を行った。向社会的な遊びにおいてはホイッスルの発生頻度が高まる傾向にあった。また、向社会行動に関する実験を行い、その際の音響行動も記録している。ハンドウイルカは自発的に向社会行動を見せることが多く、手助けを要求するような鳴音は確認されなかった。これらの結果の一部を、国際環境エンリッチメント会議および国際海棲哺乳類学会において報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最も大きな要因は、昨年度発症した研究代表者の病気および被験個体の治療によるものである。今年度は昨年度実施する予定だった研究を進めることはできたが、本来今年度に行う予定であった調査、実験を次年度に先送りすることになってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も水族館との協力体制を維持しつつ、研究を推進していきたい。野外調査においては、研究協力者の協力を仰ぎながら、精緻なデータ収集を行っていきたい。ただし、新型コロナウイルスによる影響で、水族館での研究、野外調査がスムーズに行える状況にはないため、対策を考える必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が2018年に発作性心房細動および一過性脳虚血発作を起こし、フィールド調査が難しい状態になったことから、研究計画に遅延が生じてしまった。現在は薬で治療しながらフィールド調査も行っており、一年補助事業を延長することで、当初予定していた研究が完了できるものと思われる。
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