研究課題/領域番号 |
17K00210
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
森島 泰則 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20365521)
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研究分担者 |
高野 陽太郎 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (20197122)
直井 望 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (20566400)
ローランド ダグラス 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (60749290)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 第二言語処理 / 認知的負荷 / 認知資源の配分 / 推論 / 言語理解 |
研究実績の概要 |
本研究は、外国語(第二言語、以下L2)を理解する際に、その言語処理が思考作業に及ぼす影響に関する認知的、脳機能的プロセスとメカニズムに関する研究で ある。研究対象者は、英語を第二言語とする日本人大学生である。 2018年度の研究実績を以下に要約する。本年度は、2017年度の研究成果を踏まえ、それを更に検証するため近赤外線光トポグラフィーによる脳機能測定実験を2回実施した。最初の実験では、英語を第一言語とする参加者および第二言語とする参加者による推論課題中の前頭部の脳活動を計測した。その結果、言語背景と推論課題の難易度に交互作用が見られ,英語第二言語群では右前頭,英語第一言語群は左前頭で難易度の高い推論条件で有意にoxy-Hbの変化量が上昇した。これにより、言語背景により,推論を担う脳活動の半球優位性が異なる可能性が示唆された。 2018年7月に開催された日本光脳機能イメージング学会でこの成果を発表した。 次いで、英語第二言語話者の習熟度を中級上レベル統制して実験を実施した。その結果、推論負荷が高い高難易度条件において、右前頭で英語第一言語群が英語第二言語群よりも有意に高い脳活動が見られた。先行研究から推論処理は右半球優位の活動を示すことを踏まえ,この結果は、英語第二言語学習者では英語母語話者ほど推論処理が行われなかったことを示唆するのではないかと考察される。これらの結果は、2019年度の国内外の学会発表をすべく投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要に示したように、脳機能測定実験において英語第一言語、英語第二言語学習者を比較したところ、予測とほぼ一致する結果を得ることができた。一方で、英語第二言語の習熟度が中級上レベルの学習者に絞り、より統制をかけた実験の結果では、第一実験の結果示唆されたスピルオーバー効果が認められなかった。従って、これらの実験結果をより詳細に検討し、さらに詳細に検証する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
「心の理論」課題や 倫理的ジレンマ判断課題などを含む文章を使って、より高次の思考作業を伴う理解過程におけるL2処理の負荷を計測する実験を計画、構築し、実施する。そのために、脳機能計測だけでなく、視線計測や反応時間、読解時間などの行動指標計測の実験も実施する。 それらの実験結果を踏まえ、第二言語使用時における認知資源の配分と負荷に関する理論の構築を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、2017年度からの継続的・発展的実験を実施した、その結果、海外の国際学会などでの主要な研究発表できる段階に至ったが、2018年度中にそれはできなかた。また、2018年度は前年度から実施していた実験の継続であったため、新規の機材の購入はなかった。2019年度は、本課題最終年度であるため、研究成果を国内外の学会、論文等で積極的に発表する予定である。また、新たな実験を計画しており、そのための機材(コンピュータなど)を購入する必要がある。加えて、研究代表者の研究休暇(2019年9月から1年)を利用して、海外インターナショナルスクールで学ぶ在外邦人やバイリンガル地域(例、香港)の話者を対象とした研究ができることになった。これによって、更にバイリンガル・コンテクストでの認知過程の検討を深めることが可能になると期待される。繰越金を含めた助成金は、これらの旅費、学会参加費、機材購入費として使用する予定である。
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