研究課題/領域番号 |
17K00212
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
渡辺 祐子 東京電機大学, システムデザイン工学部, 講師 (20287444)
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研究分担者 |
伊勢 史郎 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (20211732)
柴田 滝也 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (30349807)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 音像定位 / 耳介特徴量 / バイノーラル信号処理 / 音響VR |
研究実績の概要 |
本研究はヒトの音像定位能力を”技能”と捉え、それを獲得するメカニズムの検証と技能向上のための手法について検討することを目的としている。ヒトの音像定位能力は特に仰角方向において能力には個人差がある。これは音源の方向に対して受聴者個々の耳介形状に起因して変化する頭部伝達関数(HRTF)に十分な方向情報が含まれない場合に音像定位能力の低下が生じる考えられている一が、方で、訓練を重ねることで技能として獲得できる能力であると考えている。そこで1)仰角方向の音源に対して、無響室における実音源,ならびに聴覚ディスプレイにより生成される3次元的な仮想音源に対する音像定位実験を通して通常の受聴状態では音像の仰角方向知覚が困難な被験者を選定し、2)彼らに対して定位技能を獲得させる手法として耳介拡張アダプタを装着させることで、視力補正のためのメガネのように定位能力を補助・補正する”耳介メガネ”を提案することを目標としている。 H29、H30年度は、1)ヒトの音像定位能力の基礎データを採取し、方向知覚が困難な被験者を選定した。また2)実耳を用いて採取した120個の耳介石膏レプリカから耳介の3D形状データを採取し、耳介形状の特徴量として採用した鏡面反射特徴量と定位能力の関係分析を実施した。一方で3)受聴者の耳介に拡張アダプタを装着した音像定位実験を実施し、アダプタによる定位能力の変化について観測した。優位に能力が向上した被験者も 見られたがアダプタの形状、装着部位と能力に有意な関係性を見出すことはできなかった。 この研究結果については国際学会(AES 2018 tokyo conference on Spatial Reproduction)等で発表した。 4)また耳介アダプタ装着により音響的な物理特徴量であるHRTFがどのように変化するのか?について、有限要素法を用いた数値解析により検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
受聴者耳介の3Dメッシュデータを用いて形状の物理的特徴量を”光の反射”を記述する「鏡面反射特徴量」を算出することができた。また耳介拡張アダプタによる音像定位能力の向上の可能性を音像定位実験では検証したが、アダプタ装着状態の耳介3Dメッシュモデルの採取に時間を要した。これはアダプタに用いた材料がMRIを用いた3D形状データ採取方法に適当でなかったためである。また研究のゴールである「音響知覚を変化させる耳介メガネ」の形状決定にあたり、これまでは3D形状データを光の鏡面反射量分析に最適化してあったが、耳介形状変化に依存して変化する音響的なパラメータの分析をするにあたり、有限要素法の数値計算に合わせたデータの成型、座標軸設定などに変更する必要ありそれに予想外の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に音響的な数値解析のための3Dデータ作成の方法論は確立したので、今年度は所有するデータサンプルを用いた耳介形状と音響物理量の関係分析に注力する。また所属機関のキャンパス再編により音響実験室の使用が不可になったので、シミュレーションで算出したアダプタ装着時のHRTFデータを用いて聴覚ディスプレイ環境下での音像定位実験を実施することで耳介拡張アダプタによる定位能力の向上の検証を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
拡張アダプタの材料ではこれまで採用していた3Dメッシュデータの採取方法ではデータ取得ができなかったため、アダプタ材料の変更と測定方法の再考を実施する必要が生じた結果、研究計画に遅延が生じた。これにより変更した方法での3Dメッシュデータ採取とそのデータコンバートに使用する専用アプリの年間リース料として研究費を使用する予定である。
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