本課題は、少ない超音波素子数でもサイドローブを極力抑えた不規則振動子配置のパラメトリックスピーカを2台開発し、各スピーカをステアリング機能付きの駆動システムで駆動し、さらに、ステレオカメラを用いた音響ビーム照射点制御インターフェースを開発し、目的位置に漏洩なくピンポイントで情報伝達可能なシステムの開発を目的としている。 昨年度までに開発した2台のスピーカ駆動システムとステレオカメラを用いたビーム照射点制御インターフェースの並列動作に関して、当初、3台のPCに各々のシステムを搭載する予定でその並列処理に手間取っていたが、本年度にこれを解決した。照射点制御が当初の想定よりも処理量を抑えられたため、結果としてこれを1台の駆動システムと一緒に1台のPC上にインプリメントし、計2台のPCによる並列システムとなって開発を完了した。 次に、2ビーム方式による音響再生性能に関して検討した結果、当初の見込みどおり、ビーム交差点で最大音圧となるような再生音の空間特性が確かめられた。ただし、スピーカから交差点までが2mの場合、再生スポットは直径10cm程度と小さかった。また、ビーム交差角度に関して検討した結果、同じ音響パワーで駆動した場合、交差角度の小さい方が再生音レベルは大きくなり、交差角度15度の場合の方が交差角度45度のときよりも約12dB音圧レベルが高かった。一方、ビーム交差角度が大きい程、再生音の可聴領域が小さくなり、ピンポイントと呼べるには、30度以上角度があった方がよいことがわかった。交差角度を大きくした場合、左右どちらかの耳の位置で2ビームを交差させると、ビームの一方が頭に遮られることがあるため、顔の前の位置に交差させるのがよいことなどがわかった。
|