研究課題/領域番号 |
17K00230
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
杉本 千佳 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40447347)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 咀嚼嚥下 / 評価モデル / 日常計測 |
研究実績の概要 |
摂食に必要な咀嚼・嚥下機能を維持できるように、咀嚼習慣や嚥下能力を日常の中で改善していくことが重要である。そこで、咀嚼・嚥下の状態や機能を簡易に認識・評価するためのシステム構築を行っている。RGB-Dカメラを用いて非接触計測により取得できる深度情報をもとに、嚥下時の喉頭の動きから嚥下機能を評価するアルゴリズムを作成した.また同様に,顔の特徴点3次元座標から咀嚼運動を検出し、摂食時の咀嚼機能を評価するアルゴリズムを作成した。認識モデルの作成では、ランダムフォレストなどの機械学習手法を用いた。アルゴリズムの作成にあたっては、データ処理手法の工夫やモデルの改良を重ね、認識精度の向上を図った。生体情報には個体差や個体内差(時間変動)が含まれるため、年齢や性別,機能状態におけるばらつきを考慮しながら、計測対象を広げたときの問題点を抽出した。嚥下機能評価では、水飲み試験において、喉頭隆起部の上昇・下降の軌跡をトラッキングし、ある程度の精度で定量評価できることを示した。また、対象による精度差の要因を分析して、現状のアルゴリズムで対応可能な対象の特性を示した。咀嚼評価では、咀嚼運動経路から算出できる咀嚼回数、咀嚼幅、開口速度、閉口速度、咀嚼リズムを特徴量として選別し、その特性や安定性から評価手法を導出して、評価性能を検証した。さらに、作成したアルゴリズムをもとに、評価結果をフィードバックするプロトタイプシステムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に基づき、咀嚼機能および嚥下機能を簡易計測デバイスにより高精度に評価するための計測手法の確立と評価アルゴリズムの開発を行った。特に、評価に有用な適切な特徴量を選択するために、医療において実際に診断で用いられている判断基準や指標を参考にし、様々な特徴量を検討して適切なモデルを導出し、評価アルゴリズムを作成してその性能を評価した。咀嚼時、嚥下時における計測実験を行って測定データを解析し、アルゴリズムの評価を行った。また、プロトタイプではあるが、結果を表示する見える化機能を備えたシステムの開発まで至っており、計画通り進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
咀嚼評価では、新たな特徴量を取り入れて咀嚼機能を多面的に評価できるようにするとともに、総合的な評価指標も構築する。H30年度の研究成果に基づき、開発したプロトタイプシステムを日常環境下で使いやすいようにインターフェースや表示機能を改良し、さらにシステム評価を行う.また,構築したシステムが多様な対象に適用可能かどうかを評価する.十分な信頼性が得られなかった場合は,原因を分析して適用モデル、アルゴリズムに改良を加え、精度の向上を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度に購入予定で予算申請していたデバイスが発売中止となり、開発ソフトウェアの都合上、別の機器で代替する場合には新たなソフトウェア開発と性能検証の時間を要するため、当面中古品で代替することとし、次年度これに対応することとした。検証のためのリファレンスデータの計測に用いる機器および解析用ソフトウェアは、評価アルゴリズムの仕様に依存する。よって、評価指標やアルゴリズムをフィックスさせた後に最適な仕様・機能を持つものを購入するため、その物品購入費を次年度に使用することとした。また、H30年度の評価実験での対象人数が想定よりも少なくなったため、このための研究補助の謝金分を次年度の検証における研究補助用に使用する。
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