研究課題/領域番号 |
17K00242
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
高根 昭一 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (90236240)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 頭部伝達関数 / 3Dスキャナ / 3Dプリンタ / 耳型 / 頭部モデル / プラットフォーム |
研究実績の概要 |
複数の個人の頭部形状を,3Dスキャナを用いてスキャンした.その際,頭部伝達関数(HRTF)の特性に大きな影響を与えると考えられる耳介の形状をスキャンしたが,耳介の形状を正確に取得することができなかった.そのため,高い精度で耳介形状を得ることを重視し,耳介形状をアルジネート印象材と石膏によって取得して耳型を作成し,それを3Dプリンタで出力した頭部形状に接着することにした.また,光を用いて3次元形状を得る3Dスキャナの原理上の制限から,個人の頭部の頭髪部の形状を得ることができなかった.その部分は,競泳用のキャップを装着して測定し,測定後に形状の編集ソフト上でスムージングを行って頭部形状とした.以上のような方法で,ダミーヘッドおよび2名の個人の頭部(頭部モデルと呼ぶ)を3Dプリンタおよび石膏で作成した. ダミーヘッドおよび個人について測定されたHRTFと,頭部モデルを用いて測定されたHRTFを比較した.その結果,ダミーヘッドについては,頭部モデルを用いて測定されたHRTFと,本体を用いて測定されたHRTFは高い精度で一致した.一方,個人のHRTFについては,頭部モデルのものと本人のものでは,周波数特性の概形は類似しているものの,細部では違いがみられた.この差の原因としては,頭髪部の形状をスムージングしたことや頭部モデルの出力に使われた樹脂と本人の皮膚などとの音響的な特性の違いなどが考えられる. 境界要素法(BEM)を用いたHRTFの推定に関しては,耳介の形状を得るための検討に時間を要したため,プログラムを開発している段階である.また,今年度は耳介の形状を石膏の耳型として得ているが,プラットフォーム構築の観点では,被測定者に負担をかけるのは望ましくないと考えているので,改善策を検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
耳介部分の3次元形状取得の検討に時間を要したため,HRTF推定プログラムの開発の着手が遅れ,計画していたプラットフォームのうち,境界要素法(BEM)による推定の部分が未完成である.また,光を利用した3Dスキャナの原理上の制限から,3次元データとして正確な耳介形状を得ることができていない.
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今後の研究の推進方策 |
境界要素法(BEM)による個人のHRTF推定プログラムの開発を早急に行う.これについては,基本的な部分は既に作成済みで,並列処理などを利用した計算の高速性についての検討を行う状況である.さらに,現状では,アルジネート印象材と石膏を用いて耳型の作成を行っており,このことはプラットフォーム構築の観点では望ましくないと考えている.その大きな理由は,現状では,正確な耳介形状の3次元データが得られておらず,BEMによって推定を行うには不十分だからである.そのため,3次元の正確な耳介形状を得るための検討を引き続き行う.その方法をなるべく早期に確立させたうえで,なるべく多くの個人の3次元の頭部形状を得る.その後,同様に3DプリンタやBEMによる推定を並行して行い,どれだけ正確に個人のHRTFを取得できるかどうかを,客観的・主観的評価を両方行い明らかとしたい.その後で,形状の簡略化の余地について検討をしたいと考えている.
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