研究課題/領域番号 |
17K00243
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
王 鋒 前橋工科大学, 工学部, 教授 (80323046)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 温度感覚 / 触覚センサ / 焦電効果 / PVDF / 温度 / 熱特性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人間の接触温度感覚を模擬・実現する温感センサを開発することである。具体的には、機能性材料の一種であるポリフッ化ビニリディンPVDFフィルムの焦電効果を利用して、センサシステムのハードウェアと信号処理のソフトウェアを構築し、対象物に触れるときの焦電出力から、対象物の温度のみならず、対象物の熱容量、熱伝導率、および比熱等の諸熱特性を同時に計測可能、かつ順応性を持つ人間の接触温度感覚を模擬・実現する温感センサを開発する。平成29年度中、以下の内容を実施した。 (1)人間の接触温度感覚を考察した:鉄、銅、アルミ、真鍮、ステンレス、PVC、PE、アクリル等の異なる熱特性を持つサンプルを用いて人間の接触温度感覚の主観評価実験を行った。その結果に基づき、人間の温度感覚と接触対象物の温度および対象物の熱特性を表す諸物性値との関係を検討し、定量化解析を行った。 (2)センサのハードウェア設計および試作を行った:今までの研究知見をもとに、センサ受感部、センサベース部およびセンサ駆動部の形状、構造、材質の設計と、センサ出力の前処理電子回路の設計などを行い、センサ本体、センサ出力前処理電子回路等のハードウェアを構築した。 (3)開発されたセンサを用いて、上記(1)のサンプルを用いて計測実験を行った。センサがサンプルに触れた時の出力から、センサとサンプルとの間の温度差、サンプルの熱容量、熱伝導率等の熱特性を表すパラメータを検討し、対象物の温度のみならず、対象物の熱容量、熱伝導率等の材質の熱特性を同時に計測することを可能とした。 研究成果の一部は国際国内学会において発表した。さらにデータを取りまとめジャーナル投稿を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度、おおむね研究計画通りにそって以下の内容を行って、研究を進展している。 (1)実験環境構築:鉄、銅、アルミ、真鍮、ステンレス、PVC、PE、アクリル等の異なる熱特性を持つ様々な材料を利用し、一定の質量、一定の熱容量の両パターンのサンプルを外注作成した。これらのサンプルをワンタッチで固定できるサンプル把持装置などの実験環境を構築した。 (2)人間の接触温度感覚の再考察:上記各サンプルを15℃から45℃までの安全範囲内に5℃刻みに設定し、これらのサンプルに対して人間の接触温度感覚に関して主観評価データを収集する。ヌーメリック・レイティング・スケールNRS法およびビジュアル・アナログ・スケールVAS法を利用して人間の接触温度感覚を定量化し、さらに重回帰分析を用いて人間の接触温度感覚の主観評価とサンプルの温度、サンプルの熱容量、熱伝導率、および比熱等の諸熱特性との関係を検討した。 (3)センサシステムハードウェア構築:上記(2)と同時に、センサシステムのハードウェア構築を行ったこのとき、特にPVDFフィルムの出力から焦電効果と圧電効果を分離できる積層構造、また、センサに一定温度を維持できる定温駆動、温度制御システムの設計し試作し、計測実験を行った。 (4)パラメータの検討:開発されたセンサを用いて計測実験を行った。センサがサンプルに触れた時の焦電出力から、センサとサンプルとの間の温度差、サンプルの熱容量、熱流量等の熱特性を表すパラメータを定量的に検討し、対象物の温度のみならず、対象物の熱容量、熱伝導率等の材質の熱特性を同時に計測することを可能とした。また、これらの計測結果は、人間の接触温度感覚の主観評価に類似していることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度より、以下各面において研究を進展する予定である。 (1)人間の接触温度感覚をさらに解明する。平成29年度に、重回帰分析を用いて人間の接触温度感覚の主観評価とサンプルの温度、サンプルの熱容量、熱伝導率、および比熱等の諸熱特性との関係を検討した結果、5℃刻みで主観評価実験を行ったため、温度の寄与が大きすぎ、人間の接触温度感覚に諸熱特性の寄与が確認できたものの、定量的な寄与率の確立ができなかった。本年度では、温度設定の刻みを小さくし、温度の影響を小さくして人間の接触温度感覚に接触対象物の諸熱特性の定量的な寄与率の確立を目指す。 (2)センサシステムハードウェアの改良を行う。今までの知見を元に、センサ構造、緩衝材料、駆動装置、信号前処理回路等を改良し、感度を向上させる。さらにバイプロダクトとして、センサ出力の圧電効果の成分から、従来の触圧を感じる触覚センサの機能も同時に実現する。 (3)パラメータおよびアルゴリズムを確立する。センサ出力から、センサとサンプルの間の温度差、サンプルの熱容量、熱伝導率、比熱等の熱特性を表す定量化パラメータをさらに確立する。さらにこれらのパラメータと、人間の指触感の主観調査の結果の関係を定量化にする。そのうえに上記各パラメータのリアルタイム的に取得する信号処理アルゴリズムを構築する。 以上の実験を経て繰り返しセンサ改良改善を行い、人間の温度感覚を模擬・実現する温感センサを完成させ、将来提案した温感センサをロボットに装着し、ロボットに人間と同じような接触温度感覚を持たせる本研究の最終目的を目指して研究を進展する。
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