本研究は、将来福祉介護ロボットに、人間と同様な温度感覚を持たせることを目指して、人間の接触温度感覚を模擬・実現する温感センサを開発するものである。具体的には、機能性材料PVDFの焦電効果を利用してセンサシステムを開発し、対象物と接触する際のセンサ出力から、対象物の温度のみならず、対象物の熱伝導率等の諸熱特性を同時に計測可能な人間の接触温度感覚を模擬・実現する温感センサを開発する。最終年度中、以下の研究内容を実施した。 (1)介護ロボットに人間の温度感覚を再現させるために、人間の接触温度感覚に関してさらに考察した。具体的に人間の指先接触温度感覚の弁別閾値や、接触温度感覚に及ぼす接触前指の温度バイアスの影響等に関して研究を行った。その結果、人間が日常生活の10℃から40℃の範囲に、温度感覚の弁別閾値は0.9℃から0.3℃に低下し、低温よりも高温のほうの温度弁別閾値が低く、温度感覚が鋭いであることが確認できた。また、接触前指先に自然の温度より温度バイアスがある場合、指の温度感覚が鈍くなり、指先の温度感覚は指と対象物との温度差に関連するとの通説に疑問点があることが確認できた。これらの発見は温感センサのさらなる研究に重要な参考意義がある。 (2)今まで完成したセンサ本体構造、センサ信号処理システムに対してさらに改善を行った。具体的には、センサの小型化を試みた。将来ロボットの指先先端に装着することを目指し、センサ断面サイズを5mm×5mm程度に小型化して、以前の大型のセンサと同様な性能を維持できることが確認した。今後さらに小型化できることが期待できる。また、センサに人間と同様に体温を持たせる能動型化を行った。研究の結果、人間の接触温度感覚を模擬して、センサの出力から、接触する対象物の温度情報と熱伝導率、熱容量等の物性情報を同時に取得できる温感センサを実現した。
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