研究課題/領域番号 |
17K00246
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅之 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (40336938)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 立体視 / 両眼網膜像差 / 両眼視差 / 立体映像 / 3D映像 / 自然画像 / 奥行き感 |
研究実績の概要 |
両眼網膜像差は,一般的に,比較的小さい奥行きの知覚に寄与すると考えられている.しかし,かなり大きな視差であっても定性的な奥行き感に寄与することが以前から指摘されている.ここでは,自然画像がもつ潤沢な絵画的手がかりと網膜像差の相互作用について検討するために,自然画像に両眼網膜像差を与え,網膜像差の大きさと極性が奥行き感に与える影響を評価した. 視差をもつ自然画像を取得するために,デジタルスチルカメラを水平方向に移動しながら写真を撮影した.被写体は被験者にとって見慣れた大学の中の廊下であった.両眼に呈示する画像を撮影する際のカメラ間距離を網膜像差の大きさと極性のパラメータとした.カメラ間距離は-10 cm~+10 cmであった.55インチの偏光方式3Dモニターに刺激を呈示した.観察距離は,刺激の視野角が実物と一致するように,84 cmとした.被験者は,呈示された刺激を自由に観察した後に,6つの選択肢,すなわち(i) 自然な奥行きに見える,(ii) 奥行き方向に圧縮して見える,(iii) 奥行き方向に伸張して見える,(iv) 融像できない,(v) 奥行きが反転して見える,(vi) その他,の中から1つを選択することにより,奥行きの印象を評価した.9名の被験者が実験に参加した. 「自然に見える」という応答が生起する確率はカメラ間距離が+6 cmのときに最大となり,「圧縮して見える」という応答の確率はカメラ間距離が0のときに最大となった.これらは幾何学的な予測とよく一致しており,網膜像差の有効性を示している.しかし,緩やかな確率分布曲線は幾何学的な拘束が必ずしも強くないことを示しており,また,視差の極性が負のときに「反転」の応答が生じたが,その頻度は低くかった.これらは絵画的手がかりの重要性を示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成29年度は主に実験装置の構築を行った.また,両眼網膜像差が自然画像の奥行き感に与える効果を評価するための実験プログラムを作成し,簡単な予備実験を行った.研究は計画通り順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で用いた自然画像は廊下を撮影した1組の写真に限られている.今後は様々な被写体を撮影し,被写体の効果を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
立体映像表示装置(偏光方式3Dテレビ)が当初予定していたよりも低価格で購入することができた.これは,年度の初めに新しく発売された最新型のテレビには3D機能が搭載されておらず,当該機器の実売価格が旧型として低下したためである. 偏光方式の大型テレビは広い視野が得られる点に大きなメリットがあるが,クロストークが小さくないというデメリットもある.次年度はさらにクロストークのないホイートストーン式ステレオスコープを構築し,それぞれの長所を活かしながら実験を進める.
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