日常の視環境での奥行き知覚における両眼網膜像差と絵画的奥行き手がかりの役割について明らかにするために,自然画像に両眼網膜像差を与え,奥行き印象の評定を行った.①デスクトップパソコン,②本棚,③駐輪場,④長い廊下などの立体写真を55インチ4K有機ELディスプレイに呈示した.両眼網膜像差量を制御するために,立体写真を撮影する際のカメラ間距離を0~10 cmの範囲で変化させた. 両眼網膜像差に対して高い感度を示す被験者がいる一方,多くの被験者は両眼網膜像差によらず自然な奥行きを知覚した.これは,高精細な自然画像がもつ奥行き情報が多くの人にとって両眼網膜像差以上に有効であることを示唆している.
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