研究課題/領域番号 |
17K00257
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
大谷 幸三 広島工業大学, 情報学部, 教授 (40351978)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 半透明物体 / 三次元形状計測 / 光線追跡法 |
研究実績の概要 |
本研究では,半透明物体の3 次元形状を高精度に計測する新たな光学的計測法の開発に取り組んでいる.半透明物体に投影した光は内部で散乱し(表面下散乱),入射した位置とは異なる位置から出射する.そのため,半透明物体の光学的3 次元計測は困難な問題の一つとなっている.開発する計測法の特長は,この表面下散乱を積極的に活用する点にある.本手法が確立すれば,拡散,鏡面,透明,半透明といったあらゆる光学特性をもつ物体へ適用可能な3D スキャナを構築することができ,その工学的価値は非常に大きい. 2018度(2年目)は,主に,光線追跡シミュレータの改良と実物体の光散乱特性の解析の2つに取り組んだ. まず,シミュレータの改良については,微粒子の大きさと光の波長を考慮し,微粒子の反射モデルにミー散乱を取り入れた.その結果,微粒子に光が入射したときに前方散乱が以前の光散乱モデルよりも多く観察できるようになり,実物体のチンダル現象に近い画像を生成できるようになった. 次に,実物体の光散乱特性の解析については,複数の半透明物体を測定対象とし,それぞれ上部からレーザ光を照射したときの光散乱の様子を,物体の上面と側面の2方向からカメラで撮影した.また,撮像系の配置は変えず,物体上面に反射シートを設置した場合の正反射画像も撮影した.反射シートがある場合は,光の入射位置が反射位置と一致するとみなせる.そこで,反射シートがある場合とない場合を比較して,反射位置の違いを分析した.まだサンプル数は少ないが,入射角度によって位置ズレが異なる様子が観察された.さらに実験を重ね,シミュレータにおける光散乱の様子と実物体での様子を比較することで,シミュレータの妥当性を検証していく必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り,光線追跡シミュレータを改良しつつ,シミュレータで再現した光散乱画像と,実物体を観察して得られた光散乱画像との照合を進めている.また,三次元形状計測を行うための補正用データは整いつつある.しかし,光源となる半導体レーザの性能から出力がやや不安定なため,実物体の光散乱画像の観察が十分とはいえず,この点において若干の遅れが生じている.そこで,年度末に半導体レーザを購入したので,これを使って改めて実験を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析結果に基づいて3 次元計測データを補正するアルゴリズムを組み込んだ計測装置を試作する.装置の試作は,三角測量原理に基づく既存の計測装置(たとえば,マイクロソフト社のKinect など)を利用することで時間的コストを削減する.計測結果の検証には,形状が既知の半透明物体が必要になる.研究代表者(広島工業大学)及び研究協力者(茨城大学)は接触式の3次元計測機を保有していないため,測定対象の形状計測を外注し,その結果と比較検証する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗の遅れにより成果発表をする機会が予定より少なくなり若干の残額が生じた.次年度に繰り越すことになった助成金は,おもにデータ整理や実験補助にかかる人件費に充当する予定である.
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