IoTデバイスとしてヒアラブルデバイスが広まっている。ヒアラブルデバイスにおいて、音声に混在する周囲環境雑音の除去は必須である。従来から定常性の強い雑音に対する雑音除去システムが開発されているが、リアルタイム性を確保しつつ、突発的に発生する雑音の除去は困難であった。そこで本研究では、ヒアラブルデバイスが要求するリアルタイム性を確保する突発性雑音除去システムの開発を目的とする。本年度は、両耳ヒアラブルデバイス用突発性雑音除去システム開発と狭帯域成分除去システムのFPGA(Field Programmable Gate Array)実装を行った。 両耳ヒアラブルデバイス用突発性雑音除去システムの実用には、音声の音像を保存する必要がある。しかし従来の突発性雑音除去手法はシングルチャネルを想定しているために音像の保存には不向きであった。そこで本研究では、MWF(Multi-channel Wiener Filtering)を採用した。シミュレーション評価よりその手法の有効性が確認された。この研究実績を基に現在電子情報通信学会論文誌へ論文投稿を行っている。 次に、狭帯域成分除去システムのFPGAを行った。本提案手法は突発性騒音のみを推定するために4次統計量を基にする適応アルゴリズムを用いている。一般に利用される適応アルゴリズムは2次統計量に基づくものが多いが、高次となったことでダイナミックレンジが大幅に広がり提案手法の実装が容易ではなかった。しかし各信号のビット長などを調整することにより実装が実現された。 全研究期間を通して、ヒアラブルデバイス用の突発性雑音除去システムにについて開発を行った。その結果、従来は困難であったリアルタイム処理可能な手法の実現並びに高次統計量に基づく線形予測器の動作が解明された。この結果は、雑音除去システムと適応アルゴリズムの適用範囲を大きく広げることに繋がる。
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