昨年度までに,参照元のアプリケーションの構造に依存せず,必要な情報を必要な量だけ組織化でき,デジタル社会における個人の情報過多を改善するだけでなく,他者との共有によって協調作業支援にも寄与するシステムの構築を行い,ユーザが必要な情報を含む部分(パーシャルコンテンツ)だけを参照して空間的ハイパーテキストを構築して,情報の再組織化を容易にするコンテンツキュレーションの仕組みの実現を目指してきた。 令和4年度では,上記の過程を経て,情報の収集と整理を容易にする新しい人間のスキルの発現についての思索を進めるため,令和3年度に,PCやスマートフォンで稼働するシステムを実装したのに続いて,大型のテーブル型ディスプレイでの複数人での協調的コンテンツキュレーション支援の環境構築を目指した。そのために,過去の研究の成果として実現した,任意のアプリケーションのウィンドウを任意の方向に回転させることができ,複数のユーザそれぞれが自身のアプリケーションウィンドウを操作できるミドルウェアを利用した。しかしながら,このミドルウェアは,テーブル型ディスプレイ上で複数人での情報共有と確認を支援する点においては有効であったが,個々のアプリケーションの動作の緩慢さが問題となった。協調的コンテンツキュレーション支援にむけて,このミドルウェアの実装方法を改良して,利用できるアプリケーションが限定的ではあるが,スムーズな動作を実現でき,今後,有効な協調的コンテンツキュレーションの仕組みの解明に向けた端緒とすることができた。
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