研究課題/領域番号 |
17K00277
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研究機関 | 千歳科学技術大学 |
研究代表者 |
青木 広宙 千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (60380193)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 疑似力触覚 / ヒューマンインタフェース / モーションキャプチャ |
研究実績の概要 |
本研究では、Pseudo-Haptic(疑似力触覚)を、腕部全体や脚部全体といった広域な部位に生起させるための新しいHapticシステムを構築し、生起したPseudo-Hapticの生起程度を筋電信号と脳波信号との同時計測・相関分析することで、Pseudo-Hapticの生起条件について明らかにすることを目的とする。 平成29年度は、まず、Pseudo-Hapticを生起するための摂動ファクターに関する検討事項として、Pseudo-Hapticを生起するために視覚運動刺激等を制御することでPseudo-Hapticが生起する条件について検討を行った。具体的には、被験者自身の動きによる視覚情報の変化スピード(アバターの移動、画面の遷移のスピード)がPseudo-Hapticによる感覚としてどの程度あらわれるかについて主観調査により検討した。また、同時に、タスクに対する意欲および没入感を増加させための視覚提示やタスク設定がPseudo-Haptic生起に影響するかについて検討した。 加えて、Pseudo-Haptic生起時に腕部など比較的広域な部位に筋活動の増加/減少があらわれることに着目し、2種類のタスク動作(「登る」、「泳ぐ」)を対象として、筋電図と脳波の同時計測を行うための測定系の構築を行った。筋活動および脳波への影響について筋電図計と脳波計の同時計測により、予備実験を実施した。予備実験の結果、タスク動作に伴う脳波信号におけるノイズが大きく、これを減ずる必要があることが確認された。このため、計測系の再構築が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の研究実績の概要で示した通り、タスクにおける動作時の脳波信号のノイズ混入が想定以上に大きく、その対応のため進捗がやや遅れている。 現在、タスク動作に伴うノイズが発生しにくいように、被験者の可動部位の限定や姿勢の固定具の導入によるタスク・計測条件への見直しを行い、それに対応した計測システムの再構築を行っている。 また、今後、タスクの最適化を行う上で必要であると考え、申請時には予定していなかった研究内容として、Pseudo-Hapticを生起するための摂動ファクターに関し、主観調査による検討を行った。同様に、タスクに対する意欲および没入感を増加させための視覚提示やタスク設定がPseudo-Haptic生起に影響するかについて検討した。これらの検討の結果、視覚情報の変化量が同じであっても、変化スピードが異なることが生起する感覚の強さに影響することが確認された。また、漠然と動作を繰り返すようタスクにおいては、Pseudo-Hapticが生起しにくい傾向が見られ、加えて、筋活動量が低下する傾向が見られた。さらに、意欲・没入感を増加させるための視覚提示は、Pseudo-Hapticの生起を阻害する場合があることも確認された。
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今後の研究の推進方策 |
見直しを行ったタスク・計測条件において実験を行い、筋電図信号と脳波信号についてMATLABおよび分析用Toolboxを用いて統計分析を行う。また、申請者がこれまで検討してきた自己組織化マップ応用によるパターン分類を行い、Pseudo-Haptic生起時の信号パターンの特徴について明らかにする。 申請時の予定では、平成30年度は、自転車のペダルこぎを用いたタスクを設計することを予定していたが、上記の通り、ノイズの影響を考慮しながら、タスク設計を行う。また、申請時における平成31年の計画として、ヘッドマウントディスプレイによるVR技術の導入を予定していたが、これを平成30年度に前倒しすることで、体動の制限を加えやすい計測システムの構築につなげたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外で開催される国際会議で研究成果の発表を行う予定であったが、国内で開催された国際会議での招待講演として成果報告を行ったため、その分の金額が次年度使用額として計上された。平成30年度においては、当該費用を、計測システム再構築のための費用の一部として、また、平成30年9月に発行される原著論文の掲載料(平成30年5月に掲載決定)として使用する予定である。
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