本研究では、Pseudo-Hapticsを、腕部全体や脚部全体といった広域な部位に生起させるための新しい力触覚提示システムを構築し、生起したPseudo-Hapticsの生起程度を筋電信号と脳波信号との同時計測・相関分析することで、Pseudo-Hapticsの生起条件について明らかにすることを目的としている。 平成30年度に、タスクへの没入感を増加させること目的として、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)によるVR技術の導入によるPseudo-Haptics提示システムの構築し、令和元年度(2019年度)は、このシステムを用いてVR提示中の脳波計測を行うために、頭部に薄型キャップで固定するタイプの脳波計を導入した。 泳ぐような手の動きに対して画面がスクロールするようなVR空間において、被験者には、一定の周期で手を動かし、できるだけ大きく画面がスクロールさせるよう指示を出した。スクロール量の減少を視覚刺激として与えることで、Pseudo-Hapticsを提示した。脳波計測の結果、スクロール量の減少によりPseudo-Hapticsが生起しているときには、β波のパワー含有率が増加する傾向が見られ、ストレスを感じていることが確認できた。 また、当初の研究計画にはなかったが、視線計測システムを導入し、Pseudo-Haptics生起時の視線について調べた。スクロール量の減少率の違いにより、Pseudo-Hapticsの感覚の強さとして感じ取ることができるかについて、心理物理学恒常法により検証し、差異を感じ取る能力が高い被験者群と低い被験者群との間には、視線の動向が異なることが確認された。
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