研究課題/領域番号 |
17K00284
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
井上 亮文 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 講師 (50386778)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エンターテインメント / ゲーム体験 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、仮想世界中の物体の形状と常に同じ形状へと変形するインタフェースの開発である。また、このインタフェースを効果的に利用するアプリケーションを実装し、立体形状入出力機構がユーザにもたらすゲーム体験を評価する。当該年度では、本研究の基盤となるハードウェアおよびそれを制御するソフトウェアを開発した。 開発したインタフェースSHAPIO v2は、三角柱の要素(ピース)を複数連結した構造を持ち、各ピース接続部分の回転によって立体形状を表現する。ピースの回転は、ピース内部に組み込まれたサーボモータによって実現する。研究代表者は、サーボモータの重量とトルクを評価し、最大6つのピースを自由に駆動可能なスペックを算出した。また、このサーボモータおよびそれを制御するマイコンを包含するピースの筐体を設計した。研究協力者は、ピース内のサーボモータおよびマイコンに電源を供給する機構と、各ピース内のマイコンと通信してサーボモータの回転角を変更する統合制御ソフトウェアを開発した。 研究代表者は、過去に5つのピースで構成されるプロトタイプSHAPIO v1を開発した。しかし、SHAPIO v1のサーボモータはトルク不足で、荷重がかかるピースが回転せず、形状変更に制限があった。また、トルク不足を考慮して軽量に作りすぎたため、プレイヤーが立体形状の変化を感じることが難しかった。SHAPIO v2は、v1よりピース数が増えたにも関わらず、すべてのピースを回転できるようになった。重量も増えたため、プレイヤーはSHAPIO v2の形状変更によるモーメントの差を容易に感じることができるようになった。対外発表は国内のデモ展示1件、口頭発表1件、関連するアプリケーションの口頭発表1件である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハードウェアおよびソフトウェアに関しては、研究実施計画にあげた項目をすべて実現することができた。それらは本研究の実施前に研究代表者が開発したプロトタイプの性能を上回るものであることから、おおむね順調に進展していると判断した。 計画よりも進んでいる点は評価実験である。SHAPIO v2が当初の予定よりも早く完成したため、その形状変化がプレイヤーのゲーム体験に与える影響について、SHAPIO v1と同様の実験を実施することができた。その結果、一部の項目においてゲーム体験の質が向上することを統計的に確認することができた。これはSHAPIO v1では達成できなかった成果である。 計画よりも遅れている点は、SHAPIO v2が利用できるゲームの種類や、SHAPIO v2で表現可能なゲーム内アイテムの検討である。この原因は、先述の実験的知見の獲得を優先したためである。これら項目は、実験の終了後に取り組み、現在は予定通りに進んでいる。 当初の計画で予期できなかった点は3Dプリンタとサーボモータの故障である。ともに、研究を推進する過程でかなりの負荷をかけたためである。修理に時間がかかって開発が思うように進まなかったり、代替品の購入で予算を調整する必要が出たりした。その教訓から、年度末に機器のメンテナンスを重視するように方針を変更した。以降、機器の故障や不調は減っており、問題なく研究を遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の具体的な取り組み課題は(1)立体形状入出力インタフェースの軽量化・モジュール化、(2)拡張現実感・複合現実感を取り入れた立体形状入出力ゲームおよびライブラリの開発、(3)立体形状入出力ゲームの評価指標の確立、の3つである。
平成29年度の研究を通して、(1)を実現することができた。平成30年度以降は当初の予定通り(2)(3)の実現を目指して研究を推進していく予定である。これらは主にソフトウェアに関する課題である。研究代表者らは過去にVRヘッドセットを用いた拡張現実感・仮想現実感アプリケーションの開発経験があり、この成果を活用できると考えている。
ハードウェア面でも(1)の成果を引き続き改善を続けていく。例として、ピース数の増設やそれに対応したサーボモータの検証などを継続し、現在よりも複雑な立体形状を安定かつ高速に表現できるインタフェースの実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、旅費の支出が低くなったためである。当初の予定では西日本で開催の研究会に2名、東京で開催のシンポジウムに3名が参加する予定であった。前者は予定通り実施したものの、後者は前者と発表内容が重複する可能性が出たためにキャンセルをした。その差額分の約10000円が次年度使用額である。サーボモータの故障などにより物品費の支出が当初の予定より多くなったが、その分は人件費・謝金・その他の支出を削減することで対応した。この削減は、謝金の対象が大学院生から学部生になり時給が下がったことと、キャンセルした学会の参加費相当額の合計金額であり、研究の進捗に問題はない。 平成30年度は、物品費は開発用PC、旅費は国内2件・海外1件、人件費・謝金は大学院生2名分、その他は学会参加費及びサーボモータ等の消耗部品に支出を予定している。現在のところ研究開発が順調に推移しているため、これらはすべて当初の予定通りの額である。
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