研究課題/領域番号 |
17K00285
|
研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
曽根 順治 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50329215)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ヒューマンインタフェース / バーチャルリアリティ / インタラクション / MEMS / 触覚 |
研究実績の概要 |
触覚デバイスは圧電方式を採用しているため、高性能圧電膜の成膜が重要である。DC対向スパッタにより、圧電膜の成膜条件の詰めを実施した。三種類のPb量のターゲットと成膜条件を変更して、一番良い条件を求めた。その結果、一番良い条件は、性能に必要な結晶のPr(001)とPr(111)の強度の高くなる、Pb+10%(Pb10%増)のターゲットを用いた条件であった。この時の成膜中のPb、Zr、Tiの元素量は、設計値に近い値であった。しかし、最良条件では、表面粗さが悪化することわかった。 デバイスの試作は、ゾルゲル法による圧電膜の成膜を行い、3層の圧電層を作成した。その結果、複数のアクチュエータを配列したデバイス基板が作成できた。そのデバイス基板に補強基板を貼り付け、配線用のプリント基板上に貼り付けた。また、アクチュエータに電気信号を送るための配線のため、Auワイヤボンディングも実施した。輪郭抜き加工の前に補強基板を貼り付けたため、接着樹脂によりデバイス表面が汚れ、その樹脂の除去する時、表面のPt層の荒れや、一部のカンチレバーの破壊と基板外側の割れなどが起きてしまった。また、アクチュエータの電極の根元にスルーホールを設け、スルーホールをAuメッキで埋め、そこに、Auワイヤボンディングを実施した。しかし、一部のAuメッキが、ワイヤボンディング時に、剥げることもあり、Auメッキ層下部の密着性を強くする必要がある。また、汚れによりワイヤボンディングができなくなる現象も起きた。 力覚提示システムの整備も実施し、仮想空間の構築には、Unityを活用し始めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DC対向スパッタによる圧電膜の成膜条件は、かなり詰まってきた。Pb+10%(Pb10%増)のターゲットを用いた最良条件では、ゾルゲル成膜に近い結晶強度が得られることを確認できた。成膜時の安定性に若干の問題があり、また、性能に必要な結晶強度が強くなる条件では、表面粗さが悪化する問題もある。 デバイスの試作は、最後まで実施したが、強度を補強する基板の貼り付けの工程が不適切であったため、デバイス表面が汚れ、後工程の加工ができなくなる問題がおきた。その汚れ洗浄により、デバイスの劣化や一部の破壊を招いた。そのため、加工工程を見直す必要がある。アクチュエータ電極上のAuパッドも汚れがあるとAuボンディングできないことと、ハンダ面へはAuボンディングできないこともわかったため、改善が必要である。 開発中の触覚デバイスを複数指への力覚提示デバイスへ組み込み、協調動作させるには、仮想空間内で作業をシミュレーションするソフトの開発を進めて、力覚と触覚をと同時に提示できるようにする必要がある。そのために、Unityの調査を行い、簡単な機能を実装した。
|
今後の研究の推進方策 |
圧電膜の成膜は、RFスパッタに変更する。実績のある東北大 田中研究室のRFスパッタ装置と同じ装置を入手し、吉田准教授に指導を受けながら、装置の改造を行い、DC対抗スパッタで得た条件を基に、成膜条件の最適化を実施していくことにより、高性能圧電膜の成膜の早期立ち上げを行う。 デバイスの試作においては、補強基板の貼り付けを最後に実施する。配線は2段階に行い、デバイス端部に中継点を設け、アクチュエータの電極と中継点間をAuワイヤボンディングでつなぎ、配線基板と中継点は、導電性樹脂を使った配線を行う。圧電膜の成膜は、RFスパッタを活用することにより、試作効率を向上させる。 開発中の触覚デバイスを複数指への力覚提示デバイスへ組み込み、協調動作させるために、作業時に力覚と触覚を仮想空間内で同時提示する必要があるため、仮想指が作業対象に接触した時に、触覚を計算する機能を開発していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は、学科主任の役割を与えられ、また、新しく高大連携AO入試の試行を行ったため、例年の入試業務の50%増しの負荷となった。そのような業務が6月から2月まで続いたため、3月にデバイス試作を実行する必要があった。このことから、試作費70000円を残し、3月の試作費とした。
|