研究課題/領域番号 |
17K00285
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
曽根 順治 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50329215)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / バーチャルリアリティ / インタラクション / MEMS / 触覚 / 力覚 |
研究実績の概要 |
本研究は、遭遇型多指力覚提示機構の拡張と触覚デバイスの開発、その融合からなる。遭遇型多指力覚提示機構については、開発プラットフォームを、UnityとSpringHeadを融合して開発を進めており、多指力覚提示機構をUnityで制御する機能を作成した。力覚提示の遭遇型を実現するためには、各指に実装されている力覚位置変更機構と力覚角度変更機構を制御する必要があり、それを制御する機能を開発している。 触覚提示部は、試作を繰り返している。重要技術は圧電膜の成膜であり、一つはゾルゲル法、他方はスパッタ法である。ゾルゲル法は、従来のPZTの5倍程度の性能向上が可能なLaを加えたPLZTの成膜を試行している。また、濃度の濃い溶液を使用して、従来の1/3の成膜回数で成膜できるように、検討している。一昨年度の米国UC BerkeleyのMarvell Nano laboratoryの成膜条件を再現しようとして、東北大学マイクロシステム融合研究開発センター(試作コインランドリ)で、試作をしているが、使用できるスピンコータの性能が大きく異なり、性能の限界でも、厚み制御が難しいことがわかった。また、溶液の劣化もあり、新しく変更したところ、成膜厚みが変わるなどの状況が出ているが、一応、性能が出る成膜条件を詰めることができた。 遭遇型多指力覚提示機構については、力覚提示位置と力覚角度変更のためのモータ制御を、FPGAから、多軸モータ制御ボードに変更し、モータ制御システムを開発している。これにより、FPGA部のArm CPUを使用した通信部の高額SDK開発が不要となり、モータ制御システムの開発が進展した。本年度は多軸モータ制御ボードと自作モータドライブアンプを連結してモータ制御は可能となった。さらに、モータの位置初期化と力覚提示時の力覚提示位置と力覚角度変更機能をUnityに組み込むことが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
触覚提示部の開発においては、緊急事態宣言により、東北大学での試作が行えない期間が長かった。そのため、米国UC BerkeleyのMarvell Nano laboratoryで成功した成膜品質を東北大学マイクロシステム融合研究開発センター(試作コインランドリ)で、やっと再現できる程度しか実行できなかった。これは、高粘度溶液の使用(成膜回数を減らすため)により、スピンコータに高い性能が要求されるが、スピンコータの性能が大きく異なり、膜厚の制御が、東北大では、スピンコータの限界(回転数や加速度と、基板吸着性能)でも、少し不足ぎみであることに起因する。PLZTは、Pb含有のため、汎用のスピンコータは使用できないため、問題がある。 遭遇型多指力覚提示機構については、多軸モータ制御ボードに変更したため、モータ制御がC++環境からライブラリーを呼び出す方式で行えるために、機能開発は進展した。
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今後の研究の推進方策 |
触覚提示部は、試作を繰り返している。2020年度は、ほぼ、新しい厚膜ゾルゲル法による圧電膜の成膜方法を東北大学で実現するための試作を行い、スピンコータの限界近くでやっと再現できてきている。その後の圧電膜のパターニング、上部電極の成膜、圧電膜下部の振動板(Si部)の厚み調整を実施し、試作を完了する予定である。圧電膜のエッチング時の残渣により、ワイヤボンディング時に電極が剥離する問題を解決するため、配線方法を変更し、導電膜コート樹脂をパターン切断して貼り付け配線し、導通は導電ペーストを塗布して行う方法を検討する。 遭遇型多指力覚提示機構の拡張は、Unity上で開発している仮想現実感システムの拡張のため、6自由度の指の姿勢の反映機能を作成できているが、力覚提示の遭遇型機能を実現するために、各指に実装されている力覚位置変更機構と力覚角度変更機構の制御部を開発している。多軸モータ制御ボードに変更したため、モータ制御は可能となり、Unity上で開発している仮想現実感システムから、力覚提示時に、力覚位置変更と力覚角度変更が行う機能を開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
緊急事態宣言により、東北大学での試作が実施できない期間が長かったことによる。
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