最終年度では,実際的な応用の場面を模擬した実験課題を計画・実施した.主作業として,標的アルファベットの変化検出タスクを,周辺作業として,無意味図形と英単語の変化検出タスクを設定した.両作業を同時に遂行したときの周辺刺激の検出特性について分析した. 周辺刺激として,記憶負荷の影響を把握するため,無意味図形と英単語の2種類を用いた.両刺激を,画面の中心から偏心度10°右下に配置した.1試行を10秒とし,中心刺激を1秒間隔で更新した.標的アルファベットの出現回数を変更することにより,主作業の認知的負荷を操作した.周辺刺激は試行中1回だけ変化させた.変化の見落とし現象(CB現象)を付加した条件では,主作業の認知的負荷の大きさに依らず,無意味図形の変化の検出率は50%未満であった.一方,英単語の変化の検出率は97%以上と高かった.これは,周辺刺激の記憶の容易性が検出率に大きく影響することを示す. 総合実験として,主作業と周辺作業を長い時間(20分弱)に亘り従事しているときの周辺刺激の検出特性について分析した.主作業は標的アルファベットの検出であり,周辺作業は無意味アルファベット列の変化検出であった.周辺刺激は,一般的なPC作業を想定して,画面の中心から偏心度20°右下に配置した.主作業への認知的負荷(集中度)を操作するため,中心刺激の更新間隔を短時間間隔(1~2秒)から長時間間隔(15~30秒)までの4段階に設定した.短時間間隔における検出率は40%,それよりも長い他の時間間隔では50%弱とやや高い傾向が認められた.これは,主作業への集中度の低下により周辺刺激へ注意の資源が配分され,結果として,変化が検知しやすくなることを示唆する. 本研究課題で提案する4種類の周辺情報提示制御方式のうち,「非検出型」,「偶然検出型」,「強制検出型」については実現の見通しが得られた.「要求検出型」については,実験的検証が残されている.
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