研究課題/領域番号 |
17K00305
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鷲尾 隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00192815)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 統計的因果推論 / 非線形性 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
IoT 技術で多数の変数を観測し、統計的因果推論により大規模対象系のメカニズムを把握するニーズが増大している。しかし、線形で非ガウスノイズを有する大規模系でしか、実用的解析原理・手法は知られていない。一方、最近、本研究提案者等は広範な大規模非線形系に関する実用的原理・手法の糸口を見出した。本提案研究はこれを基に、(1)非線形系の多数の観測変数間の因果関係を高精度推定する新原理の確立、(2)新原理の拡張による高精度、高速な大規模系の統計的因果推論手法の開発、(3)大規模人工データによる基本性能検証、(4)実データによる実際的性能検証、(5)国際ジャーナルや主要国際会議での成果発表に並行した実装プログラムの公開と世界的普及、を目的としている。 本年度は、「(1)非線形系の多数の観測変数間因果関係を高精度推定する新しい統計的因果推論原理の探求」を進め、少数変数データで計算検証を行って結果をこの原理探求にフィードバックし、基礎原理を確立した。そこでは、ノイズがガウスか非ガウスか、変数とノイズが独立かなどに係わらず、変数間の因果の向き沿った非線形回帰残差が逆向きの残差より小さいことを、数学的に証明した。。すなわち我々の理論では、対象系が非線形ならば、ノイズの性質や独立性、交絡変数の有無などに依らず、非線形回帰残差から変数間の因果関係を一意に推定できることが明らかとなった。また、この原理に基づき新しい統計的因果推論のアルゴリズムを確立した。 これら一連の研究によって、(1)の基本原理に関して機械学習の主要国際会議であるAISTATS2018に投稿論文が採択された。さらに国際主要ジャーナルへの投稿も行い、現座査読過程にある。このように、本研究において順調な成果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「(1)非線形系の多数の観測変数間因果関係を高精度推定する新しい統計的因果推論原理の探求」を進め、少数変数データで計算検証を行って結果をこの原理探求にフィードバックし、基礎原理を確立した。 また並行して、「(2)新原理の拡張による高精度かつ高速な大規模対象系の統計的因果推論手法の開発」にも取り組んだ。 そして、これらの一部について「(3)手法の大規模人工データへの適用による基本性能の検証」を進め、主に計算効率の観点からその結果を(1)(2)の作業にフィードバックし、研究を推し進めた。 これら一連の研究によって、(1)の基本原理に関して機械学習の主要国際会議であるAISTATS2018に投稿論文が採択された。さらに国際主要ジャーナルへの投稿も行い、現座査読過程にある。これらは、概ね申請時の計画に沿っており、順調な成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「(2)新原理の拡張による高精度かつ高速な大規模対象系の統計的因果推論手法の開発」に関する初年度の高速な手法・アルゴリズムに成果に、「(1)非線形系の多数の観測変数間因果関係を高精度推定する新しい統計的因果推論原理の探求」の知見をさらに導入して高精度化を行い、高精度かつ高速な大規模対象系の統計的因果推論手法を構成する予定である。そして、その手法について、「(3)手法の大規模人工データへの適用による基本性能の検証」を進め、推定精度、計算効率の両面で結果を(2)の作業にフ ィードバックする。これらの手法開発が一定の水準に達した段階で、「(4)手 法の実データ適用による実際的性能の検証」を進め、さらに推定精度、計算効率の両面で実用性を高めるための結果を(2)の作業にフィードバックする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度中に欧州で開催される国際会議1件2名の出張と国内学会1件での発表出張のための旅費を想定していたが、それぞれ発表時期が平成30年度の4月と6月に延びため、その分の旅費の計上が次年度に繰り越しとなった。
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