研究実績の概要 |
IoT 技術で多数の変数を観測し、統計的因果推論により大規模対象系のメカニズムを把握するニーズが増大している。しかし、これまで線形で非ガウスノイズを有する大規模系でしか、実用的解析原理・手法は知られていない。これに対し、本研究提案者等は広範な大規模非線形系に関する実用的原理・手法の糸口を見出した。本研究はこれを基に、(1)非線形系の多数の観測変数間の因果関係を高精度推定する新原理の確立、(2)新原理の拡張による高精度、高速な大規模系の統計的因果推論手法の開発、(3)大規模人工データによる基本性能検証、(4)実データによる実際的性能検証、(5)国際ジャーナルや主要国際会議での成果発表に並行した実装プログラムの公開と世界的普及、を目的としている。 本最終年度は、提案する統計的因果推論手法をRegression Error based Causal Inference (RECI)と名付け、(2)と(3)において広範な人工データについて既存手法ANM, PNL, SLOPE, IGCI, CURE, LiNGAMと性能比較を行った。その結果、既存手法と比較して、混入ノイズがガウス雑音である非線形系から生成されたデータから、理論的に期待される通りに既存手法と比べてより正確な変数間の因果関係推定が可能であることを確認した。さらに(4)において、物理、社会科学、生化学、医学など様々な分野における因果関係を有する変数間のCause Effect Pairs (CEP)ベンチマークデータを用いて検証を行った。この検証においても、既存手法に対して我々のRECI法は高い精度を示すことが確認された。これらの成果と実装プログラムは、前年度発表した国際会議AISTATS論文と国際主要ジャーナルPeerJ Computer Science論文を通じて公開した。
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