研究課題/領域番号 |
17K00306
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平山 勝敏 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (00273813)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 船舶衝突回避 / 非協力エージェント / マルチエージェント経路発見 / 制約最適化問題 |
研究実績の概要 |
平成29年度には、交付申請書に記載した4つのサブテーマに取り組み、特に以下の項目で一定の成果が得られた。 項目(1) 非協力エージェントの行動推定: 分散船舶衝突回避アルゴリズムにおいて、分散経路探索層を持たない船舶(非協力エージェント)の存在が系全体にどのように影響を与えるかシミュレーション実験により調べた。通信機能を持たず自身のコスト関数の最小化のみを追求するEgo-Ship、分散探索により他船と協力して全員のコスト関数の総和の最小化を目指すCo-Shipを混在させ、その比率を変えた際の衝突発生回数および最短路からの外れ具合を測定した。その結果、Ego-Shipを増やすと衝突発生回数は明らかに増加するがCo-Ship同士の衝突は起きないこと、また、Ego-Shipとの衝突を避けるためにCo-Shipが大きく迂回することが分かった。 項目(3) 集中型マルチエージェント経路探索アルゴリズム: 倉庫内を移動する複数の自律移動ロボットの経路探索へ応用することを目指して集中型アルゴリズムの開発に取り組んだ。今年度は、制約最適化問題としての定式化と汎用アルゴリズムの適用を試み、複数の簡単な問題例での評価実験を行った。その結果、問題例によっては変数や制約の数が膨大となり求解に多大な時間を要することがわかった。 一方、他の項目(2)と(4)に関して、検討はしたものの大きな進展は得られなかった。今後の対策として、項目(2)については、現状ではテーマとしてやや抽象的であるため、さらに具体化する予定である。また、項目(4)については、別途進めている協力ゲーム理論あるいはチーム編成に関する研究との連携が可能か否か検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎となる研究成果が、平成29年度、海上交通およびマリンエンジニアリング分野における国際的なトップジャーナルであるJournal of Navigationに採択、掲載された。当該年度に実施した主な研究課題は、それらの成果を特に応用面においてさらに発展させるものであり、研究課題の理論的な基盤が当該ジャーナルの査読者とのやり取りを通してより明確かつ堅固になったこと、および、少なくとも2つの萌芽的な応用研究が進展したという点で区分(2)と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に挙げた4つのサブテーマについて、それぞれ以下のように推進する予定である。 項目(1) 非協力エージェントへの対処: 非協力エージェントへの対処として、従来、その行動を推定することを主に検討していたが、平成29年度のシミュレーション実験により、単に行動を推定するだけでは限界があり、協力エージェントの行動のバリエーションを増やすなど総合的な対策が必要との洞察を得た。次年度はその路線で検討する。 項目(2) 分散フリートマネジメントの可能性: 新しい研究対象として分散フリートマネジメントという課題を検討し、制御システムにおける目標設定と衝突回避アルゴリズムを効果的に連携させる新規の研究課題をスタートさせる。 項目(3) 集中型マルチエージェント経路発見の新しい定式化: 平成29年度には当該問題を制約最適化問題として定式化したが、次年度は数理計画モデル等による定式化を検討する。 なお、項目(4)については、研究実績の概要でも述べた通り、別途進めている協力ゲーム理論あるいはチーム編成に関する研究課題にも関連するため、次年度はそちらの研究課題と連携することを目指し、本研究課題では主に上記の項目(1)から項目(3)のサブテーマに注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年3月開催の学会において発表するべく項目(1)の研究課題を当初進めていたが、同年度に実施した他の研究課題の学会発表が他に5件重なっていたこと、また、この研究課題に関して発表予定だった第1著者の都合が合わず、2018年3月開催の学会での発表を見送ることとなった。その代わりとして、2018年6月開催の学会で発表することが確定している。上記の次年度使用額はその学会発表用として使用する予定である。
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