本年度には、年度当初に挙げた以下の課題に取り組み、一定の成果が得られた。 項目(1):分散衝突回避アルゴリズムDSSA+では、衝突を回避するにあたり角度変更と速度変更のうちどちらを重視するかを各移動体が事前に重みとして設定する必要があるが、適切な重みの値は各移動体が置かれた状況により異なる。そこで、第一ステップとして、全移動体が共通の重み値を利用すると仮定して、全移動体の初期位置と目標位置のパターンを入力、試行の結果として最も良いシステム性能を示した共通の重み値を教師信号とした教師あり学習を適用し、状況に応じた適切な共通の重み値を事前にDSSA+に与えることができるかどうかを確認する試験的な実験を行った。まだ試験的段階であり,新型コロナウイルスの影響もあって成果公表にまでは至らなかったが、ある程度有用な知見が得られたと考えている。 項目(2):2次元平面内での自律編成型フリートコントロールのアイデアをドローン等の飛行体を想定して3次元空間に拡張するための第一ステップとして、DSSA+を3次元空間に拡張した衝突回避アルゴリズムDSSA+for3DをUnity上に実装し、様々な設定で実験的な性能評価を行った。 項目(3):障害物の多い複雑な環境を想定した集中型あるいは分散型の衝突回避アルゴリズムを実現すべくマルチエージェント経路発見(MAPF)に関する最新動向を再調査し、複雑環境下での「渋滞解消」を目指して移動回数制限付きMAPFとそのアルゴリズムに関する研究に着目することとした。本年度は移動回数制限付きMAPFの既存定式化に内在する実用上の問題点を指摘し、その問題点を改善する新しい定式化を提案した。また、その新しい定式化に対する集中型および分散型のアルゴリズムを提案し、それらの性能評価を行った。
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