研究実績の概要 |
1) 局所探索ベースのCプログラム(LS-Ramsey)において,探索制御は主に命題変数の不活化期間の詳細設定に基いているが,タブー探索や焼き鈍し法の原理に準ずる機能が実現された.これにより,persymmetryを有するRG(4,6,35)等の稀少なRamseyグラフの追発見に成功した.さらに,Ramsey数R(4,6)の下界更新に寄与するRG(4,6,36)の探索(未解決問題)に注力した結果,残単色クリーク数7まで到達した. 2) PythonによるRamseyグラフ探索プログラム(DL-Ramsey)を新たに開発した.言語処理系に起因する実行効率の低さや探索ヒューリステイックスが簡略化されたこと等のため,探索能力において前項のLS-Ramseyより劣るものの,次項で必要な学習データを蓄積するには十分である. 3) Ramseyグラフの判定に不可欠な単色クリーク計数関数(countMC)について,探索中に得られる入出力データから深層学習により回帰学習する手法を検討した.学習後のモデルを利用して,局所探索プログラムが陥りがちな局所最適解からの脱出など,優良な解近傍を選好的に探索する機構を実現する狙いがある.深層学習における敵対的生成ネットワーク(GAN)の手法によれば,目標解をより直接的に発見する機構の実現にも期待がかかる.予備実験の結果,RamseyグラフRG(3,3,5)のcountMC関数については,中間層1層の完全結合ネット構成により完全学習が容易に実現された.一方,研究対象の最前線とされるRG(5,5,42)や未発見のRG(4,6,36)などについては,回帰学習が極めて困難であることが分かった. 本アプローチの実践的有効性について判断するためには,ネットの多層化や畳み込み層追加等のモデルの詳細設計,サンプル集合の適切な選定など,追究すべき多くの研究課題が残されている.
|