研究課題/領域番号 |
17K00311
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
高濱 徹行 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (80197194)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 最適化アルゴリズム / 多峰性最適化 / 関数形状推定 / 山谷構造 / 近接グラフ / 進化的計算 / 差分進化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,進化的計算などの集団的最適化アルゴリズムにおいて,探索点の隣接関係から山谷構造を求め,探索点の分布タイプを推定し,探索点をグループ化してグループ毎に探索点の生成・置換戦略やアルゴリズムパラメータを動的に制御することにより,高次元多峰性問題を効率的に解くことである. 本年度の主な研究成果は以下の通りである. ①変数間依存性の高い最適化問題は,依存性の強い変数を同時に改善する必要がある困難な問題である.これに対処するために,昨年度に提案した相関係数を利用する方法をさらに改良し,相関係数の値が「相関係数の平均値+標準偏差」を超える変数間に依存性があると判断し,グループ化する方法を提案した.交叉の際にはグループ毎に交叉するかどうかを決定する.通常の交叉と提案した交叉を併用する確率を適応的に調整することにより,変数間依存性の強い問題を解き,通常の交叉と比較して,優れた結果が得られることを示した. ②実問題に多い制約付き最適化問題を解くために,昨年度に提案した等価ペナルティ係数(EPC)法を改良し,EPC法のパラメータを適応的に調整する方法を提案した.提案手法を差分進化および粒子群最適化(PSO)という異なる最適化アルゴリズムに適用し,代表的な制約付き最適化ベンチマーク問題を最適化することにより,その有効性を示した. ③アルゴリズムパラメータの適応的制御を改良するために,失敗情報を利用する方法を提案した.アルゴリズムパラメータFとCRの値を各20区間に分割した400区分毎に,子が親より良くなった成功回数と悪くなった失敗回数を記録する.失敗回数と成功回数をそれぞれ最大失敗・成功回数で正規化し,その差を失敗しやすい確率とする.JADEアルゴリズムによって生成されたFとCRの組を失敗しやすい確率でリジェクト・再生成することにより,JADEより優れた結果が得られることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,下記の①~④の項目について研究を進めている.各項目の進捗状況は以下の通りであり,おおむね順調に進展していると言える. ①探索点の隣接関係および山谷構造の推定:Gabrielグラフと相対近傍グラフの併用に関する研究を行っているが,併用する際の適切な確率の設定がやや難航している.今後は,適応的な確率の調整方法などについて検討を進める予定である. ②変数間依存性の推定:当初の研究項目であった「探索点の分布タイプの推定」を拡張して,昨年度より「変数間依存性の推定」を研究項目としている.今年度は,昨年度から提案してきた変数間の相関係数に基づく変数のグループ化とグループ毎の交叉の改良を行った.これにより稜構造を有する困難な最適化問題を効率的に解くことができるようになったため,本研究項目はほぼ完了したと考えている.ただし,余裕があれば,今年度検討し始めた距離相関係数を用いて分布タイプを推定するための研究も継続したいと考えている. ③探索点のグループ化:昨年度までの研究により,目的関数の良さによるグループ化の有効性を示すことができているため,本研究項目はほぼ完了したと考えられる.ただし,余裕があれば,山点・谷点を利用したグループ化についてもさらに検討を継続したいと考えている. ④生成・置換戦略とアルゴリズムパラメータの制御:アルゴリズムパラメータの適応的制御の改良として,失敗情報を利用する方法を提案し,その有効性を示すことができた.さらに,実問題において重要な制約付き最適化に対して,昨年度提案した適応的ペナルティ法である等価ペナルティ係数法の汎用性と有効性を示すことができた.これらの研究は,当初の予定には無かったが,本研究と密接に関係するものであり,想定以上の進展があったと考えている.なお,EPC法をPSOに適用したSWARM2019の論文でBest Paper Awardを獲得した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,各研究項目について,以下のように研究を進める予定である. ① 探索点の隣接関係および山谷構造の推定:Gabrielグラフと相対近傍グラフの併用確率について,適応的な確率の調整方法などについて検討を進める. ② 変数間依存性の推定:今年度検討し始めた距離相関係数を用いて分布タイプを推定するための研究を継続する.ただし,余裕がなければ,相関係数に基づく変数のグループ化とグループ毎の交叉を採用することになる. ③ 探索点のグループ化:山点・谷点を利用したグループ化についてさらに検討を継続する. ただし,余裕がなければ,目的関数の良さによるグループ化を採用することになる. ④ 生成・置換戦略とアルゴリズムパラメータの制御:アルゴリズムパラメータを適応的に調整するために,失敗情報を利用する方法について研究を継続する.グループ化とアルゴリズムパラメータの適応的調整を組み合わせる方法について研究を継続する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で参加を予定していた研究会が中止になり旅費が不要となったこと,研究が順調に進み研究補助を必要としなかったことから,約8万円の残額が生じた.残額は,今後必要となるWeb会議用の物品を購入するために使用する予定である.
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