研究課題/領域番号 |
17K00314
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
大原 剛三 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30294127)
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研究分担者 |
斉藤 和巳 神奈川大学, 理学部, 教授 (80379544)
木村 昌弘 龍谷大学, 理工学部, 教授 (10396153)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / 社会ネットワーク分析 / クリティカルリンク / 知識発見 |
研究実績の概要 |
本研究では,インターネット上の社会ネットワークを流れる情報,実世界における道路網を移動する人・車など,多様な大規模ネットワーク上を移動する様々な対象を情報,その流れを情報フローと位置付け,欠損した場合にその情報フローを大きく阻害するクリティカルリンクを正確,効率的に発見する手法を実現し,多様な実ネットワークへの適用を通して,発見したクリティカルリンク,リンク評価指標およびネットワークの構造的特徴間の関係性ならびに実問題での有用性を明らかにすることを目的としている. 2018年度は,前年度の報告書記載の計画通り,クリティカルリンク発見手法のスケーラビリティ向上のために,近似計算技術ではなく,ネットワーク分析におけるブリッジ同定の技術を利用した厳密計算によるアルゴリズムを実現した.これにより,平均可到達ノード数損失に基づく各リンクの重要性評価値の計算の効率化が可能となった.また,災害時の予期せぬ道路寸断,社会ネットワークにおける情報拡散の不確実性をモデル化する確率的リンク切断モデルを導入するとともに,災害時避難,消防活動,救急搬送などの特定の目的地への緊急時の移動を想定し,その移動に利用できる最大許容時間の制限の下での道路ネットワークにおける各リンクの重要性を効率的に計算するアルゴリズムを実現した.これらにより,より現実的な問題設定の下でのクリティカルリンクを効率的に同定することを可能とした. 一方,ブリッジリンクと同様に,削除するとネットワークを複数の部分ネットワークに分割するノードがブリッジ同定アルゴリズにより同定可能であることに着目し,提案アルゴリズを改良することで,ネットワーク中のクリティカルノードを同定することも可能とした.これは,社会ネットワーク上の情報伝搬においては,その情報フローの要となり,道路ネットワークでは効率的な移動の要となるノードに相当する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,ブリッジ同定アルゴリズの導入により,平均可到達ノード数損失を指標としたクリティカルリンク同定の厳密計算の効率改善を達成している.また,媒介中心性を指標としたクリティカルリンク同定に関しては,媒介中心性の本質的な計算コストは削減できないものの,高い精度を保った近似計算による効率化を進めている.一方,複数の社会ネットワーク,道路ネットワークへの提案法の適用も進めている.その結果,最終年度は,提案法の洗練を進めるとともに,提案法により得られたクリティカルリンクと他の指標に基づいて得られた重要リンクの比較を通して提案法の有用性を評価し,実問題における新たな知見の発見を試みる段階となっており,全体として予定通り進行している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究実施状況を踏まえ,最終年度となる今年度は,予定通り,クリティカルリンク同定アルゴリズの最終的な洗練,および各ネットワークにおいて同定したクリティカルリンクと他の指標の下での重要リンクの比較を通して,提案法の有用性を明らかにするとともに,各ネットワークにおけるクリティカルリンクに関する新たな知見を導出する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究成果発表を行った国際会議の1つが国内開催のものであったため旅費が安価で済んだこと,アルバイトを予定していた博士前期課程学生のスケジュール調整が不調に終わったためにアルバイト謝金の支出がなかったこと,および高額な実験用計算機の購入が現有設備の調整で回避できたことなどから,約105万円残ることとなった. (使用計画)次年度の使用においては,上記次年度使用金額のうち90万円を加えた140万円程度を研究代表者・研究分担者の旅費に充当し,それに伴う学会参加費として10万円を予定している.次年度使用金額の残りのうち5万円を加えた25万円程度をアルバイト謝金に充当し,研究全体の進捗を加速させるとともに,残りに10万円を加えた30万円程度で最終的な結果の分析に使用する計算機を調達する.
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