研究課題
本研究課題では、ポスト深層学習として近年特に着目されている位相的データ解析において中心的役割を果たす持続性ホモロジーという概念を言語ルール化して言語ベースクラスタリングに組み込むことにより、データの構造を柔軟に把握することのできる位相的言語ベースクラスタリング技法の開発を目的とする。さらに、従来のクラスタリング技法と開発技法との数理的関連性を通じて、ポスト深層学習を見据えた位相的言語ベースクラスタリングの理論的発展およびソーシャルデータ・医療データのマイニングへの実用化を目指す。H30年度は、以下に挙げる各研究内容について、番号順に実施した。(1) 持続性ホモロジーの数理的構造の解明・言語ルール化に関する検討:前年度に引き続き、連携研究者と協力しつつ、数理モデルにおける持続性ホモロジーの構造の解明および言語ベースクラスタリングに組み込み可能な持続性ホモロジーの言語ルール化を継続して行った。(2) 位相的言語ベースクラスタリング技法の開発:言語ルール化した持続性ホモロジーをこれまで申請者が開発してきた言語ベースクラスタリングに組み込むことにより、位相的言語ベースクラスタリング技法の開発を試みた。しかし、言語ベースクラスタリングに組込み可能な持続性ホモロジーの言語ルール化には持続性ホモロジーの理論の把握が非常に重要であり、そのため、持続性ホモロジーの言語ルール化に関する検討に多くの時間を費やした。結果、まず言語ルールに拠らない持続性ホモロジーを組み込んだ新たなクラスタリングアルゴリズムを開発した。
2: おおむね順調に進展している
H30年度に予定していた研究計画の夫々について達成度の評価を、(A) 予定以上、(B) 予定通り、(C) 予定よりやや遅れている、(D) 予定よりかなり遅れている、の4段階で行う。1. 持続性ホモロジーの数理的構造の解明・言語ルール化に関する検討について、第2四半期末までに行う予定だった。前年度に引き続き、連携研究者と協力しつつ、数理モデルにおける持続性ホモロジーの構造の解明を継続して行ったが、言語ベースクラスタリングに組み込み可能な持続性ホモロジーの言語ルール化については当初の予定より若干遅れた。(C)評価。2. 位相的言語ベースクラスタリング技法の開発について、言語ベースクラスタリングに組み込み可能な持続性ホモロジーの言語ルール化が当初の予定より若干遅れたため、開発もやや遅れている。そこで、持続性ホモロジーを直接言語ルール化せず、まず言語ルールに拠らない持続性ホモロジーを組み込んだクラスタリングアルゴリズムを開発し、その後、そのアルゴリズム全体を言語ルール化する方針とすることとした。そのため、言語ルールに拠らない持続性ホモロジーをベースにしたクラスタリングアルゴリズムを開発した。(C)評価。3. 開発手法の検証・既存手法との比較検討について、開発したアルゴリズムとの比較検討を理論的側面と実験から行った。特に理論的側面から検討できたことは高く評価できる。(A)評価。全体的に、やや遅れている部分と当初の計画より進んでいる部分があり、総合的に「おおむね順調の発展」と判断した。
H30年度はやや遅れている部分と当初の計画より進んでいる部分があったが、総合的におおむね順調に発展した。H31年度は以下のように、概ね当初の予定通り遂行していくこととする。1. 位相的言語ベースクラスタリング技法の開発:H30年度に開発した、言語ルールに拠らない持続性ホモロジーを組み込んだクラスタリングアルゴリズム全体を言語ルール化することにより、位相的言語ベースクラスタリング技法を開発する。1. ポスト深層学習に向けた位相的クラスタリング技法の再体系化:開発した位相的言語ベースクラスタリング技法と現在の位相的(モデルベース)クラスタリング技法との数理的関連性の考察を行い、言語ベースの観点から位相的クラスタリング技法の再体系化を進める。従来のクラスタリング、申請者がこれまで取り組んできた従来の言語ベースクラスタリング、現在研究の進んでいる位相的クラスタリング、申請者が本研究課題で開発する位相的言語ベースクラスタリングの4者の数理的相関関係が明確になれば、クラスタリング技法全体の包括的展開が望める。これは、現在ポスト深層学習として期待されているTDAの発展にきわめて大きな貢献となろう。2. ビッグデータのマイニングの実用化:実際のビッグデータによる検討を通じて、特にデータの構造・規模・複雑さ・不確定性の観点から、開発手法で適切に処理できるビッグデータの類型分類を行う。それにより、開発手法の特徴が明らかになると同時に、ビッグデータのマイニング実用化を進めることができる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics
巻: 23-3 ページ: 571-576
https://doi.org/10.20965/jaciii.2019.p0571
巻: Vol.22, No.4 ページ: 537-543
10.20965/jaciii.2018.p0537