研究実績の概要 |
近年, 畳み込みニューラルネットワーク(CNN) によってコンピュータによる物体認識技術は人間と同等の精度を実現できるようになった. 一方で, CNNで必要なメモリや計算のコストが増加しているが,計算性能が低い端末上でCNN を利用したいといった需要が増えている. そこで, CNN の高い認識精度を維持したまま, メモリや計算コストを軽量化することを目的として研究を行なった.軽量化手法の一つにプルーニングが挙げられる.これは特徴量算出に用いるパラメータの中で重要度が低いパラメータを削除することで,精度を維持しつつメモリや計算コストを削減する手法である. 従来のプルーニングでは,事前に決定した方策に基づいて削除するパラメータを決定しているが, その方策が必ずしも最適とは言えないことが考えらえる. 本研究では,進化計算と強化学習の2つのメタヒューリスティクスな手法を用いて事前学習済みネットワークの畳み込み層のフィルタパラメータを自動選択する方法を開発した.これらの手法を用いて,CNN の精度を維持しつつ,コストを削減するプルーニングを行い,それぞれの手法の性能評価を行なった.評価実験には認識難易度の異なる二つのデータセットを用いた.一つは認識難易度の低い手書き数字認識用の画像データセットであるMNIST, もう一つはMNIST と比較すると認識難易度が高い一般物体画像のデータセットであるCIFAR10を用いて評価実験を行なった.実験の結果,進化計算手法に比べて強化学習を用いた手法で安定してプルーニングを行うことができた.強化学習を用いた手法では,MNIST を用いた実験では提案手法は従来手法と同等の性能を示した一方,Cifar10 を用いた実験では削減率が従来手法より劣るという結果になった.
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