研究課題/領域番号 |
17K00337
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
巽 啓司 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30304017)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カオス力学系 / 準ニュートン法 / 大域的最適化 / メタヒューリスティック解法 / SR1公式 |
研究実績の概要 |
H29年度計画の「近似ヘッセ行列を用いた摂動型カオス」の「準ニュートン法を用いた方法」として,BFGS公式に基づく準ニュートン法を用いる摂動型カオス力学系(PQN)を提案し,摂動項を用いていてもdamped法を適用することで,正定値性を保持する近似ヘッセ行列を生成できることを示した.また,提案手法を分岐図を用いて解析し,準ニュートン法のスケール変換に対する不変性が反映された求解上の利点を確認.また,提案法のカオス性条件の近似的導出を行い,その条件が目的関数に依存しないことを確認した.さらに,単点探索を用いるカオス的アニーリング法を用いて提案法をベンチマーク問題に適用し,数値実験においてその求解性能が従来の最急降下法を用いる摂動型カオスより優れていることを確認した.この結果を論文誌に投稿し,採録(雑誌論文1).また,近似ヘッセ行列更新法にSR1公式を用いる方法を提案し,計算量が削減できることを示した(学会発表1). H29年度計画「ベイズ最適化手法を用いた摂動型カオスの提案」とH30年度計画の「多点探索法での実装」の研究として,Particle Swarm Optimization や Firefly algorithm を拡張した「得られた解を局所解にもつガウス関数を用いた仮想関数に対する摂動型カオス近似解法」の改良法を提案,ベンチマーク問題に適用し,その性能が従来のPSO等に比して求解性能が高いことを確認.この結果を論文誌に投稿し,採録された(2018年掲載予定:雑誌論文3).H30年度計画の「一般的な探索方法に適用可能なより柔軟性の高い摂動型カオス」の理論的な研究として,必ずしも降下方向とは限らない更新方向や,変数変換を用いた力学系のカオス条件を,従来示されたものより弱い条件として理論的に示した.この結果を論文誌に投稿し,採録された(雑誌論文2).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度計画の一つである「近似ヘッセ行列を用いた摂動型カオスの提案」の「準ニュートン法」を用いた摂動型カオス力学系として,BFGS,SR1公式に基づく方法の研究は予定通り進んでいる.一方で,「CMA-ESを用いた方法」は,前者に比べ数値実験により計算量がかかることを確認したため,次年度以降は,主に「準ニュートン法を用いる方法」に注力する. もう一方のH29年度計画の「ベイズ最適化手法を用いた摂動型カオスの提案」については,改良近似解法を提案し,多点探索点を用いた方法への拡張なども順調に進めている.H30年度計画の一部である「一般的な探索方法に適用可能なより柔軟性の高い摂動型カオス」のうち,降下方向と限らない更新方向や変数変換を用いた力学系のカオス十分条件の導出については前倒しで研究を進めている.これらの結果より,概ね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に提案した「準ニュートン法を用いる摂動型カオス力学系」や「得られた解を局所解にもつガウス関数を用いた仮想関数に対する摂動型カオス」に対して計画通り「各手法での大域的な探索の強化・調整法の検討」やその性能評価などを行う. 前者の方法に対しては,SR1, BFGS公式での近似ヘッセ行列の更新式の違いによるカオス力学系の求解能力などの比較や,実装上のパラメータ選択などを容易にする方法を検討する:(i)定数を用いることの多いステップ幅について近似直線探索を導入,(ii)カオス性を常に維持しつつも,探索範囲のみを調整する方法を導入し,カオスによる多様な探索と探索の集中化の調整を容易にする方法を検討する.また,単点探索のみであったものを多点に拡張し,最良解情報を多数の探索点間でどのように共有するかを検討する. 後者の方法については,多数の探索点について,いくつかの階層構造を導入し,全最良解を用いた多様な探索と目的関数値が小さい少数の最良解の付近を重点的に探すような集中化探索を同時に行うことで,探索の効率化と計算量の削減を目指した方法を開発する.また,ガウス関数のパラメータや摂動項のパラメータやステップサイズなどの設定や調整と,解の探索状況についての関係を,理論的・実験的に検証し,求解効率向上のために役立てる. また,上記改善法のカオス力学系のモデルに合わせて,対応するカオス十分条件やその分岐図についての考察を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の研究成果の一つ「得られた解を局所解にもつガウス関数を用いた仮想関数に対する摂動型カオス近似解法」を論文誌に投稿し平成29年度中に採録となり,この年度中に掲載料を支払う予定だったが,その掲載時期が遅れてしまい平成30年度にずれ込むことになった.そのため,その掲載料をやむを得ず次年度に持ち越している.平成30年度には,掲載料の一部として使用する予定.
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