研究課題/領域番号 |
17K00341
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
野村 厚志 山口大学, 教育学部, 教授 (40264973)
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研究分担者 |
岡田 耕一 山口大学, 大学教育機構, 講師 (50452636)
水上 嘉樹 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (60322252)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 反応拡散 / FitzHugh-Nagumo / 視覚情報処理 / 非対称結合 / 非線形画像処理 / 興奮・抑制 / 静止パターン / 神経回路網 |
研究実績の概要 |
非対称結合を有する反応拡散ネットワークのための計算プログラムを実現した。反応拡散ネットワークとは、非線形反応を示す素子を2次元又は3次元の格子状に配置し、隣接素子を結合させたものをいう。ここでは、非線形反応素子として神経軸索における興奮・抑制の非線形応答の数理モデルであるFitzHugh-Nagumoモデルを考える。これは、反応拡散系を空間的に離散化・近似したものから着想を得ている。これまでの研究では、隣接素子の結合方法は対称としてきた。すなわち、隣接する格子点AとBを考えたとき、点Aの状態は点Bに影響を及ぼすとともに、同様に点Bの状態も点Aの状態に影響を及ぼす対称的な結合としてきた。方向性を持たない拡散現象から着想を得たためである。なお、対称結合を有する反応拡散ネットワークでは、興奮状態は一様にいずれの方向にも伝搬し、2次元ではある1点を興奮状態とすると円形状にその状態が伝搬する。 以上の対称的な結合に対して、反応拡散ネットワークを画像処理・計算機視覚のアルゴリズムに適用するとき、非対称結合の必要性に気づいた。一つの例として、両眼立体視におけるステレオ視差検出の問題がある。左右の眼に映る濃淡パターンの対応付けに基づき、それらの位置の違い(視差)を検出するが、左右の眼の位置関係から、片方の眼にしか映らないパターンがありうる。この場合、対応付けが取れない視差不定の領域が生じ(隠れ領域)、これを穴埋めする必要があるが、埋める方向性を考慮する必要があると考えたためである。 初年度は、最も単純な2次元の反応拡散ネットワークにおいて、非対称結合を導入し、興奮状態が伝搬する様子について、対称結合の場合と比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非対称結合を有する2次元の反応拡散ネットワークを実現したが、パラメータを変えたときの伝搬の様子について、基本的な性質の理解が不十分であった。 なお、画像処理のエッジ検出において、既存の対称結合を有する2次元反応拡散ネットワークを用いたアルゴリズムに新たな発見があった。そのため、アルゴリズムの修正と、複数の試験用データセットに対する評価を行い、従来の代表的な手法と比較検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、非対称結合を有する反応拡散ネットワークを用いたステレオ画像からの視差検出アルゴリズムの構築を行う。平成29年度の経験から、過去に構築した3次元の反応拡散ネットワークを修正すれば比較的容易にアルゴリズムの実現が可能と考えられる。そして、アルゴリズムの視差検出精度の定量的評価を行い、他の類似のアルゴリズムと比較することで、非対称結合を導入したことの有効性を確認する。
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