研究実績の概要 |
本研究の目的は,ネットワークの特徴に適した新しい距離を用いて,ネットワーク間 の距離を用いたネットワーク・ダイナミカル・システム理論を構築することである.さらに,ここで構築した理論を実データ解析へ応用する.具体的に得られた成果をまとめると2点となる. (1) スペクトクグラフ理論に基づくネットワーク間の距離の定量化指標を用いてネットワーク・ダイナミカル・システム理論の基盤を構築した. (2)ネットワーク理論に関する周辺理論の整備を行った.さらに,提案理論を現実世界に存在する高解像度時空 間ネットワークデータの解析に応用した.具体的には,SocioPattern が提供する実際の病院でのコンタクトネットワーク (P. Vanhems et al., “Estimating Potential Infection Transmission Routes in Hospital Wards Using Wearable Proximity Sensors,” PLoS ONE, 8, e73970, 2013.) を用いて行った.このデータセットでは,患者と医師, 看護師を含めたヘルスケア担当者がネームタグを身につけており,このネームタグには,RFID によるワ イヤレスセンサが備えられている.また,20 秒毎にこれらの人たちの空間的な距離が計測される (総計測時間 97 時間).各ネームタグには固有の識別 ID がついているため,各人は ID で同定される.このネットワークデータを対象として,ネットワーク・ダイナミカル・システムの立場から,ネットワークの時間発展予測を行った結果,提案する予測手法を用いることで性能が最も良くなることが示された.
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