本年は,提案手法の多目的最適化への展開を見据えて,正則化項をもつニューラルネットワークを題材にして計算負荷が高い時の局所探索法の援用について模索し研究発表を行った. また,最終年度では,提案手法のカーネルの種類とその性能について調査した.調査が進むにつれ,カーネル関数が対象とする特徴の性質と問題との相性を考えることの重要性が浮き彫りになってきた.例えば,これはかなり早い段階でわかっていたが,最小パス距離カーネルでは全グラフが解となるような問題を効率的に解くことが難しい.どのパスも長さが1になるからである.混合カーネルを用いることにより改善が見られることを一昨年に発表したが,この原因究明をしている段階でその関係性が明確になってきた.混合カーネルを用いる場合,どのカーネルに重きを置くべきか,対象となる問題を解いて見ないことにはわからないという問題がある. これについては,20年度からの科学研究費にてグラフカーネルをDeep graph kernelにして,問題クラス毎にカーネルの特徴を分散表現することにより解決するアプローチについて模索することになった. さらに理学科の教員と共同で有機薄膜太陽電池の分子設計に取り組むことになった.ネットワークとして表現される化合物の組成を提案手法により探索するものである.今まで,人工的な問題にしか取り組んで来なかったが,実用的な問題に提案手法を適用することになり,提案手法の社会的な貢献が期待される.
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