| 研究課題/領域番号 |
17K00355
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| 研究機関 | 福岡工業大学 |
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研究代表者 |
山口 明宏 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (60281789)
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| 研究分担者 |
斉藤 朝輝 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (60344040)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | カオス真軌道 / 乱数検定 / 擬似乱数生成 / 独立性 / 安全性 |
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| 研究実績の概要 |
本研究では，統計的性質が保証されたカオス真軌道を検証用のデータとして，乱数検定の独立性を解析することを目的として，次の３つの課題に取り組んでいる．課題１）乱数検定アルゴリズムのテストデータとしてのカオス真軌道の生成系の構成，課題２）NIST乱数検定の並列化と高速乱数検定サーバーの開発，課題３）乱数検定の独立性解析と乱数検定の評価アルゴリズムの開発．令和２年度は，課題１および課題３に関連して，主にカオス真軌道を用いた擬似乱数生成の高速化と乱数検定の安全性の解析を行った．擬似乱数生成の高速化については，前年度に提案したNewton法を用いたベルヌーイ写像の真軌道による擬似乱数系列と同等の2値系列を直接計算する方法について，その時間計算量の解析，および，Newton法によって得られた擬似乱数と真軌道から得られた擬似乱数に一致しないビットが生じる確率の解析を行うことで，提案方法の高速性を解析的に示すことができた．時間計算量の解析結果については，数値実験により計算時間を評価した結果とよく一致した．乱数検定の安全性の解析については，Kolmogorov-Smirnov(K-S)検定を用いた一様性の検定におけるP値の離散性の影響の低減方法として，カオス真軌道で生成した擬似乱数によって得られるP値の分布を参照分布とする方法を提案していたが，今年度は，より一般化して，K-S検定において参照分布と実際の分布にずれがある場合について，ずれの大きさが検定結果に与える影響を解析的に示すことができた．この結果は，乱数検定においてK-S検定によるP値の一様性の検定を用いる場合の安全性の評価指標に応用できると考えられる．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題１の乱数検定アルゴリズムのテストデータとしてのカオス真軌道の生成系の構成については，マルコフ過程に厳密に対応する区分線形写像による生成系，ベルヌーイ写像のカオス真軌道にフィルタ演算を適用する生成系，２次元キャットマップのカオス真軌道の生成系など当初予定していた生成系は構成できている．更にベルヌーイ写像の真軌道による擬似乱数生成については，生成速度の高速化に成功している．課題２については，NIST ＳＰ800-22の乱数検定ツールについて並列化と操作用のWebアプリケーションの開発がほぼ完了している. 課題３については，乱数検定の類似度の評価アルゴリズムについて，昨年度に引き続き複数の対立仮説を設定して得られるP値を検定項目の特徴ベクトルとして検定項目間の類似度を評価する方法を検討しているが，結果が設定する対立仮説に依存してしまうため，適切な対立仮説の選定など類似性の概念の構築に時間を要しており進捗がやや遅れている．
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| 今後の研究の推進方策 |
課題１，課題２については，研究は概ね当初の計画にそって進んでいるが，課題３については，乱数検定間の類似性の評価の部分が課題となって当初想定していた一般的な概念としての乱数検定の最小集合の構成が難しくなっている．令和３年度については，この課題３を中心に研究を進める．具体的には，最小集合を構成する考え方を見直して，これまでに行っていた複数の対立仮説の検定結果のP値を検定項目の特徴ベクトルとして乱数検定の類似度を評価する方法に加えて，乱数検定の検定項目の集合について設定した対立仮説の検出能力を評価することで検定項目の集合の良さを評価する方法を検討する．これらの結果をもとに，設定した対立仮説に相対的な概念として，検定項目数が少なく，かつ，検出力が高い検定項目の集合を構成するための方法を確立することを目指す．更に乱数検定の安全性の評価についてもK-S検定以外の検定方法について解析を行う．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は，学会や研究打ち合わせのオンラインでの実施による旅費の未使用と研究進捗の遅れにより当該助成金が生じています．当該助成金については，令和3年度に学会発表や研究打ち合わせの費用，計算機関連の保守部品の購入費用などとして使用する予定です．
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