人と環境を共有しながら協働するロボットに,タスクの実行状況を自然言語により識別する能力をもたせる方法を研究開発した.2019年度は,2018年度までに構築した問題設定をベースにして,より望ましい識別結果を得る方法を構築し,検証を行った. 前年度までの成果により,曖昧さを含んだ自然言語表現をベースにタスクの階層性を考慮した上でタスクの実行状況を識別するという問題設定を明らかにした.しかし,この問題設定をもとに直接的にデータベースから状態識別の学習を行うと,階層性を含めたサブタスクの実行状況のすべての組み合わせの可能性を考慮した場合,識別候補が多くなりすぎてうまく識別できないという問題が顕在化した.タスクをサブタスクに分割することでより細かいタスクの実行状況を表現した場合に,それぞれの細かいサブタスクについて「達成した」「失敗により別の状況になった」等の識別があり得る.一連の動作を表現する文章は,それらのサブタスク時系列について,その一部を表現している可能性も,複数部分の組み合わせを表現している可能性もある.この多くの可能性のために識別候補が多くなりすぎるために訓練データが不足したことが原因であると考えられる. そこで,タスクの階層性を利用し,ある文章が表現する各サブタスクの実行状況に一定の制約を設けることで「あり得る文章表現」の可能性を限定する方法を考案した.実際の自然言語表現では,サブタスク時系列の中で時間的に離れたサブタスクの組み合わせが一つの文によって表現されることは考えにくい.このような考え方を導入することに成功した.これにより,これまでの枠組みでの識別率が80%であったのに対して92%に識別率を向上させることができた. また,前年度に本研究課題の派生課題として扱った依存関係推定にもとづく動作生成・学習法とロボット知能の関係を考察する書籍をまとめた.
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