おもりの加速やホイールの角加速により2足歩行の補助を行う慣性アシスト手法について、本年度はとくに1歩の時間を長くすることを試みた。これは遊脚振り出しの時間を長くして振幅を大きくするためである。実験には本研究で開発した等身大の2足歩行ロボットを用いた。歩行周期を長くとるためには、左右揺動運動を振幅の大きな領域で安定して継続できるようにしなければならない。左右揺動運動をアシストする腰部ホイール機構は、これまでは遊脚開始からの時間に応じて制御を行ってきたが、長周期の領域では偏差を収束させて一定振幅に近づく特性である「引き込み」が不足していたため、支持脚直上近くまで重心を寄せる長周期の歩行は安定しなかった。そこで、以前に単純な2点支持倒立振子(足先幅のある1本脚の左右揺動装置)の研究において、ホイール回転の時間制御でアシストするより、足先の一定ストロークのキック機構で床面を蹴るものの方が強い引き込み特性を持っていたことを再度考察し、同様の効果をつくるために足先の床面からの高さをレーザー計測して腰部ホイール制御を行うようにしたところ、長周期運動を安定化することに成功し、目標である歩幅の大きい歩行がしやすくなった。 本研究では慣性アシストによる2足歩行の補助について多くの試みを通じて機構や制御法を改善し、有効性のある手法を明らかにした。人の歩行への適用については、おもりの前後加速によって遊脚の前振り出しのアシストを行った。ロボットについては同様の脚運動アシストに加えて、腰部ホイールの角加速によって左右の揺動運動のアシストを行った。このアシストのタイミングをセンサ情報によって制御することにより、ゆっくりとした長周期の歩行を導きながら、同時に歩行の安定性を上げることができるようになった。
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